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日本語教員試験の基礎試験対策 区分6割・総合8割を越える

公開 ・ ナレッジバンドル編集部

日本語教員試験の基礎試験対策 区分6割・総合8割を越える

日本語教員試験 攻略シリーズの第6回です。第1回では、令和6年度・令和7年度に受験した33人分の合格・不合格体験記を読み込み、受かった人と落ちた人の違いを整理しました。そのとき一番気になったのが、基礎試験で74〜75点に止まって不合格になった人が3人いたことです。合格の目安の8割まで、あと5点でした。

令和6年度に基礎75点で不合格になった日本語教師の卵さんは、こう書いています。

「70点代であっけなく落ちます。」

私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていて、日本語教員試験の500問は、基礎試験の5区分を公式の出題割合に合わせて配分しています(社会・文化・地域75問/言語と社会50問/言語と心理50問/言語と教育175問/言語150問)。基礎試験には「区分ごとに6割程度」という条件があるので、出題の少ない区分も本番と同じ比率で解いておかないと、穴に気づくのが本番になってしまうからです。

第6回の今回は、基礎試験の合格基準のしくみと、5区分それぞれの押さえどころ、そして区分6割・総合8割を越えるための勉強の進め方をまとめます。主な読者は、11月8日の本番まで36日の人(A)と、来年度に受ける人(B)の両方です。


基礎試験の合格基準は「2つの条件」を同時に満たすこと

基礎試験は 120分・100問・選択式・1問1点(100点満点) です。合格基準は、文部科学省の令和8年度 日本語教員試験 実施要項に次のように書かれています。

「必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で6割程度の得点があり、かつ総合得点で8割程度の得点があること。」

つまり、条件は2つです。

  • 5つの区分のどれもが6割程度に届いていること
  • 100問の合計が8割程度に届いていること

「基礎は8割取ればよい」と覚えている人がいますが、それだけでは足りません。合計で8割を越えても、どこか1つの区分が6割に届かなければ不合格になり得ます。また、「程度」という言葉のとおり、基礎・応用とも、年度ごとの難易差などによって合格基準が調整されることがある、とされています。令和6年度の試験案内は「6割」「8割」と書いていましたが、令和7年度からは「程度」が付いています(令和8年度 試験案内)。

さらに大事なのが、基礎試験が合格点に達しないと、応用試験は採点されないことです。試験全体が不合格になります。公式の数字から計算すると、令和7年度の試験ルートでは基礎試験に合格した1,309人のうち1,269人(96.9%)が応用試験にも合格していました(令和7年度 実施結果)。基礎から受ける人にとって、勝負の大半は基礎試験です。合格率の読み方は第3回でくわしく扱いました。

小さい区分は「数問の取りこぼし」で足切りになる

区分ごとの問題数・配点は、公式には発表されていません。ただ、出題割合が「約1割」の区分は、100問のうちおよそ10問前後と考えられます。6割程度なら6問前後が目安で、5問落とすと届かない計算です(割合からの目安で、公式の値ではありません)。

出題の多い区分なら、1〜2問の失点は吸収できます。ところが小さい区分は、苦手な論点が2〜3問まとめて出ただけで足切りの線に近づきます。「配点が小さいから後回し」が、いちばん危ない考え方です。


5区分の出題割合と、押さえておきたいテーマ

出題範囲は「登録日本語教員 実践研修・養成課程コアカリキュラム」の必須の教育内容です。基礎試験では、これが5つの区分に分かれ、おおよその出題割合が公表されています。

公式に出ているのは試行試験の一部のサンプル問題だけで、日本語教員試験の過去問は存在しません。本試験の問題冊子は持ち帰れず、記憶による再現も含めて公開・共有が禁止されています。そのため、ここでは公式のサンプル問題に出ているテーマと、体験記に書かれた「出題の印象」をもとに整理します(令和7年度 出題内容及びサンプル問題)。

(1) 社会・文化・地域(約1〜2割): 最新の施策と統計

在留外国人施策、多文化共生、言語政策、日本語教育史、日本語の試験、世界と日本の日本語教育事情などです。公式のサンプル問題には、文部科学省の調査の数字を使った統計の問題が入っています。令和6年度に合格したこすいさんも、統計が深く問われたと振り返っています。

この区分は、覚えた年度の数字が古くなるのが落とし穴です。制度や統計は、できるだけ新しい年度のものを確認しておきましょう。

(2) 言語と社会・(3) 言語と心理(各 約1割): 捨てずに6割を守る

言語と社会は、社会言語学、待遇・敬意表現、言語・非言語行動、多文化・多言語主義など。言語と心理は、談話理解、第二言語の習得過程、学習ストラテジー、異文化受容・適応、学習の情意面などです。公式のサンプル問題にも、コード・スイッチングやダイグロシア、学習ストラテジーを扱った問題があります。

前の章のとおり、この2つはそれぞれ約1割しかありません。用語の数は多くありませんが、似た用語どうしの区別(どの場面の、誰の、何の話か)があいまいだと、選択肢で迷ってまとめて失点します。

(4) 言語と教育(約3〜4割): 参照枠・評価法・著作権・ICT

最大の区分です。コースデザイン、教授法、評価法、授業計画、日本語教育と ICT、著作権などが入ります。公式のサンプル問題には、「日本語教育の参照枠」、行動中心アプローチ、バックワード・デザイン、パフォーマンス評価がそろって出ています。

体験記でも、令和6年度の基礎試験について著作権・ICT・参照枠の問題が多かったという声が複数ありました(こすいさん、げんさん、日本語教師の卵さん)。令和6年度に不合格で、令和7年度に基礎89点で合格したmcylioさんは、1回目の反省として、評価の問題で用語は知っていても現場での使い方やグラフの読み方が分かっていなかったことを挙げ、2回目は参照枠と評価法を補強しました。

(5) 言語(約3割): 音声と文法は聴解にもつながる

一般言語学、日本語の音声(アクセント・調音点・調音法)、文字と表記、語彙、文法、語用論などです。音声の知識は、応用試験の聴解で学習者の発音の誤りを聞き分ける問題にもそのまま使います。第1回でも触れたとおり、音声分野を後回しにして回り道をした合格者がいました。聴解の練習は第8回で扱います。

令和6年度の「難しかった」を今年に当てはめない

令和6年度の基礎試験はマニアックだったという声が多かった一方、令和7年度は取り組みやすかったという声が目立ちます。

「令和7年度の基礎試験は前年より難易度が下がっていたと思います。」(takumikdh)

公式の数字でも、試験ルートの基礎合格率は計算で8.8%から37.0%に上がりました。令和8年度がどちらに近くなるかは、公式には何も予告されていません。どちらに振れても崩れないように、5区分をまんべんなく6割以上にしておくのが基本です。


合格者の区分別の点数を見てみる

区分ごとの点数を本人が公開している合格者が2人います。どちらも令和7年度、試験ルートの受験です。

  • jero_teacherさん: 基礎82点(10・11・9・27・25)
  • げんさん: 基礎91点(11・11・10・32・27)

※げんさんの記事は、ご本人が運営するサイトへの案内を含みます。

区分ごとの満点は公式に発表されていないため、ここでは「何割取れたか」には換算しません。それでも、2人を並べると分かることがあります。合計の差は9点ですが、(2)(3) の小さい区分の差は0〜1点だけで、差の大半は (4) 言語と教育(5点)と (5) 言語(2点)から来ています。

小さい区分は「落とさない」ことで区分の条件を守り、大きい区分で「積み上げる」ことで総合8割を越える。区分6割と総合8割という2つの条件は、こうして役割を分けて考えると勉強の配分を決めやすくなります。


区分6割・総合8割を越えるための勉強の進め方

1. 点数は「区分ごと」に分けて記録する

問題演習の正答率を合計だけで見ていると、小さい区分の穴に気づけません。解いた問題は区分ごとに正答率を出し、6割を下回る区分がないかを先に確かめます。総合を上げるのは、そのあとです。

私たちのアプリでも、本番形式テストで合格率と弱点のカテゴリをグラフで確かめられるようにしています。500問を区分の割合どおりに入れているので、テストの結果をそのまま「どの区分が足りないか」の確認に使えます。

2. 「説明できるか」で理解を確かめる

基礎試験は、用語を見たことがあるだけでは選択肢を絞り切れません。令和7年度に基礎75点で不合格になったにんじんけーきさんは、敗因の一つに「「人に説明できるレベル」まで落とし込めていなかった」ことを挙げています。

反対に、再受験で合格した mcylio さんは、なぜこの答えか、ほかはなぜ違うかを「家で飼っている猫を相手に授業をするような気持ちで」声に出して説明していました。

確かめ方の例として、編集部が作った例題を1問出します。編集部が作った例題です。本試験の問題ではありません。

日本語の母語話者が、日本語を学んでいる人と話すときに、ゆっくり話す・やさしい語に言い換える・くり返すなど、相手に合わせて話し方を調整すること(教室の中の教師の話し方に限らない)を何と呼ぶか。

  1. ティーチャー・トーク
  2. フォリナー・トーク
  3. コード・スイッチング
  4. ピジン

正解は 2 です。大事なのは、ほかの3つがなぜ違うかまで言えるかどうかです。

  • ティーチャー・トークは、教師が教室で学習者に向けて話し方を調整すること。場面が教室の教師に限られる
  • コード・スイッチングは、会話の中で言語や言語変種を切り替えること。相手に合わせた話し方の調整そのものではない
  • ピジンは、共通の言語を持たない人どうしの接触から生まれた、簡略化された言語。個人の話し方の調整ではない

4つの選択肢それぞれについて、このように一言で説明できれば、その論点は本番でも取れます。説明に詰まった用語が、復習するべき場所です。

私たちのアプリでは、全問の解説に正解の理由と各選択肢の正誤を書き、解説の中の用語をタップすると専用の用語辞書が開くようにしています。本を別に用意しなくても、「ほかはなぜ違うか」まで1問ずつ確かめられる作りです。

3. 解ける問題より、間違えた問題に時間を使う

直前2か月・150時間で合格したmeiphanさんは、間違えた問題だけ解説をノートに写して集中的に攻略していました。

「解ける問題をいくら何度も解いても、得点力は一切上がりません。」

間違えた問題は区分ごとに集めて、小さい区分の誤答から先に片づけます。区分6割の条件を守るには、それがいちばん効きます。

4. 別の試験の問題で取れた点数を過信しない

日本語教員試験には過去問がないため、合格者の多くは出題範囲の近い別の試験の過去問で練習していました。ただ、問題の形式・問数・時間は違います。日本語教師の卵さんは、その過去問で8割近くまで仕上げても、本番の基礎は75点でした。

練習の点数が8割ちょうどでは、本番で5点下がれば届きません。練習では余裕を持って8割を越え、区分ごとに6割を切らないことを目安にしてください。

5. 1周目で100問すべてにマークする

基礎試験は120分で100問、1問あたり約72秒です。令和6年度に不合格になったfujita1339さんは、文法の問題で時間を使い、「気がつくとあと残り1時間でまだ60問近く残っていました」と書いています。

後半に小さい区分の問題が残っていると、時間切れがそのまま区分の足切りにつながります。迷う問題は印をつけて先へ進み、まず全問にマークしてから見直すのが基本です。当日の時間配分は第9回でくわしく扱います。


【A】本番まで36日: 基礎試験の直前の優先順位

令和8年度の試験は11月8日(日)、基礎試験は10:00〜12:00です。受験票は10月中旬(予定)にマイページで発行されるので、A4で印刷して持参します。直前期の基礎試験対策は、体験記と公式の基準から組んだ例として、次の順番で進めるのが一つの目安です。

  1. 区分ごとの正答率を出す: まず今の位置を確かめる
  2. 6割に届かない区分をなくす: とくに (2) 言語と社会・(3) 言語と心理。似た用語の区別を「説明できるか」で確かめる
  3. (1) の施策・統計を新しい年度で確かめる: 古い数字のまま覚えていないか
  4. (4) の参照枠・評価法・著作権・ICT、(5) の音声を固める: 総合8割の上積みはここから
  5. 120分・100問を通しで解く: 1周目で全問にマークできるかを確かめる

基礎試験が免除で応用試験だけを受ける人も、基礎の知識は読解と聴解の土台になります。読解の対策は第7回、聴解の対策は第8回で扱います。


【B】来年度に受ける人: 基礎試験から逆算して準備する

令和9年度の試験の日程・方式は、まだ発表されていません。文部科学省は令和9年度以降の CBT 方式への移行を検討していて、令和9年2月に CBT の試行調査(プレテスト、合否判定なし)を予定しています。詳細は令和8年10月頃に公表予定とされていますが、この記事の時点では確認できていません。

方式が変わっても、区分6割・総合8割という基礎試験の考え方を前提に準備を始めておいて損はありません。

  • まず自分が基礎から受けるのかを確かめる: 基礎が免除になるルートがあります。現職者の経過措置は令和10年度の試験が最後です(ルートは第2回で整理しました)
  • 5区分を出題割合どおりに回す: 最初から小さい区分を計画に入れる
  • 音声分野は早めに毎日少しずつ: 基礎の (5) と応用の聴解の両方に効く
  • 「説明できるか」を最初から習慣にする: 読んで分かった気になるのを防ぐ

まとめ: 小さい区分は守り、大きい区分で積み上げる

  • 基礎試験の合格は「5区分それぞれ6割程度」かつ「総合8割程度」。基礎が届かないと応用は採点されない
  • 約1割の区分は数問の失点で足切りの線に近づく。配点が小さい区分ほど後回しにしない
  • 合格者2人の区分別の点数は、小さい区分がほぼ同じで、差は大きい区分から出ていた
  • 点数は区分ごとに記録し、理解は「ほかの選択肢がなぜ違うか説明できるか」で確かめる
  • 令和6年度の「難しかった」も、令和7年度の「易しくなった」も、今年にそのまま当てはめない

次回の第7回は、応用試験の読解を扱います。60問100分の中で、資料を読みながら最後の2択をどう絞るかを、体験記から整理します。


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※この記事は2026年9月28日時点の公開情報をもとにしています。試験の制度や日程、合格基準は変わることがあるので、受験前に必ず文部科学省の日本語教員試験のページで確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。例題は編集部が作ったもので、本試験の問題ではありません。

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