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日本語教員試験の仕組み 基礎・応用・免除ルートと経過措置

公開 ・ ナレッジバンドル編集部

日本語教員試験の仕組み 基礎・応用・免除ルートと経過措置

「日本語教員試験 攻略シリーズ」の第2回です。第1回では、令和6年度・令和7年度に受けた33人の体験記を読み込み、受かる人と落ちる人の違いを整理しました。第2回の今回は、その前提になる 試験の仕組み を、文部科学省の資料だけで確かめていきます。

日本語教員試験は、同じ会場で同じ日に受けても、人によって受ける科目が違う試験です。基礎試験から受ける人もいれば、応用試験だけの人、どちらも受けずに合格証書を受け取る人もいます。どの「ルート」で出願したかによって、受けるもの・免除されるもの・合格の後にやることが変わります。体験記の中には、このルールの読み違いで、いったん手にした合格を取り消された人もいました。

私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていて、日本語教員試験の500問は、基礎試験の5区分を公式の出題割合に合わせて配分しています(社会・文化・地域75/言語と社会50/言語と心理50/言語と教育175/言語150)。基礎試験は総合点だけでなく、5区分それぞれで6割程度を取らないと合格にならない仕組みなので、1割しか出ない区分も同じように練習できるようにするためです。


まず全体像:国家資格「登録日本語教員」のための試験

日本語教員試験は、2024年4月に施行された「日本語教育の適正かつ確実な実施を図るための日本語教育機関の認定等に関する法律」(令和5年法律第41号)にもとづく試験です。認定日本語教育機関で教える 国家資格「登録日本語教員」 になるには、この試験に合格することが必要です。

  • 実施するのは国: 実施要項には「日本語教員試験は、文部科学大臣が行う。」とあります(令和8年度 実施要項)。実際の運営は委託先の「日本語教員試験センター」が担当しています。
  • 受験資格はない: 同じ要項に「年齢、学歴、国籍等の条件は不問とする。」とあります。学位が必要になるのは、後で説明する「免除」を受けるルートの要件です。受けるだけなら誰でも受けられます。
  • 実施はまだ2回だけ: 令和6年度(2024年11月17日)と令和7年度(2025年11月2日)。令和8年度は 2026年11月8日(日) で、出願(7月13日〜8月21日)はすでに締め切られています。
  • 登録者の数: 登録日本語教員として登録を受けた人は、令和8年8月21日時点で20,075名です(文部科学省 登録ページ)。

なお、似た名前の「日本語教育能力検定試験」(日本国際教育支援協会=JEES が実施)は別の試験で、国家資格の試験ではありません。ここを混ぜると、後で説明する免除の条件を読み違えます。


基礎試験と応用試験:何を、どれだけ解くのか

試験は 基礎試験 と 応用試験 の2つに分かれています。どちらもマークシートの選択式で、記述式の問題はありません(令和8年度 試験案内)。

  • 基礎試験: 120分・100問・1問1点(100点)。出題範囲は「登録日本語教員 実践研修・養成課程コアカリキュラム」の必須の教育内容で、5つの区分からおおよその割合で出題されます。
  • 応用試験: 読解 100分・60問と、聴解 約50分・50問。1問1点で合計110点です。聴解は学習者の発話や教室でのやりとりの音声を聞いて答える問題です。

基礎試験の5区分と、公式のおおよその出題割合は次のとおりです。

  • (1) 社会・文化・地域: 約1〜2割
  • (2) 言語と社会: 約1割
  • (3) 言語と心理: 約1割
  • (4) 言語と教育(教育実習を除く): 約3〜4割
  • (5) 言語: 約3割

応用試験のほうは、試験案内に「区分を横断する出題のため、領域ごとの出題割合は示していません。」とあります。基礎試験で問われる知識を、教案や会話の資料、音声の中で使えるかを見る試験だと考えると分かりやすいでしょう。区分ごとの対策は第6回、読解は第7回、聴解は第8回で詳しく扱います。

当日は、この2つの試験を1日で受けます。

基礎試験は10:00〜12:00、応用試験の読解は13:20〜15:00、聴解は16:10〜17:00(約50分)です。基礎試験と読解は20分までの遅刻なら受けられますが、試験時間は延びません。聴解は遅刻すると受けられません。基礎試験が免除の人は、12:00〜13:00に入室します。朝から夕方まで続く長い1日で、配分や疲れへの備えは第9回でまとめます。


合格基準:「区分6割程度」と「総合8割程度」

合格基準は、実施要項に次のように書かれています(令和8年度 実施要項)。

  • 基礎試験: 「必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で6割程度の得点があり、かつ総合得点で8割程度の得点があること。」
  • 応用試験: 「総合得点で6割程度の得点があること。」

どちらにも「程度」が付いていて、要項には「基礎試験、応用試験とも、年度ごとの難易差等により合格基準の調整を行うことがある。」とも書かれています。実際に何点が合格ラインだったのかは、公式には公表されていません。体験記には合格基準を80点と書いている人もいますが、これは本人の記載です。

この基準で大事なのは、次の3点です。

  1. 基礎試験は二重の条件: 総合点が8割程度あっても、どれか1つの区分が6割程度に届かなければ不合格です。約1割しか出ない「言語と社会」「言語と心理」も、捨てることはできません。
  2. 基礎が届かないと、応用は採点されない: 両方を受けて基礎試験が合格点に届かなかった場合、応用試験は採点されず、試験全体が不合格になります。文部科学省のページにも「基礎試験の合格または免除を得なければ、応用試験に合格することはできません。」とあります(文部科学省 日本語教員試験のページ)。
  3. 基礎だけ受かれば、次回は基礎免除: 基礎試験が合格点に届き、応用試験が不合格だった人には「基礎試験合格証明書」が交付されます。次回以降は、この証明書の写しを出せば基礎試験が免除されます(証明書の有効期限は資料で確認できませんでした)。

2つ目の点は、体験記を読むとよく分かります。令和6年度に独学で受けた 日本語教師の卵 さんは、「基礎試験が100点中75点で、80点のボーダーは越えられませんでした。」と書いています。この場合、応用試験がどれだけできていても点数は付きません。第1回で紹介したとおり、33人の中には基礎試験74〜75点で止まった人が3人いました。

基礎から受ける人の合格率は、令和6年度の9.3%から令和7年度の35.7%へと大きく変わりました(令和7年度 実施結果)。この数字の読み方は、次の第3回で詳しく扱います。

私たちのアプリの本番形式テストでは、合格率と弱点のカテゴリをグラフで確かめられます。総合点が足りていても、どこか1区分が低ければ落ちるという基礎試験の仕組みを考えると、「どの区分が6割を割っているか」を早めに知っておくことが、点数を上げること以上に大切になります。


資格取得ルート:誰が、どこを免除されるのか

ここからが、この試験のいちばん分かりにくいところです。登録日本語教員になる道筋は「資格取得ルート」と呼ばれ、ルートによって受ける試験と、合格の後に必要な「実践研修」が変わります。

通常のルート(2つ)

  • 試験ルート: 基礎試験と応用試験の両方に合格し、登録実践研修機関で実践研修を修了します。養成課程を経ていない人は、このルートです。
  • 養成機関ルート: 登録日本語教員養成機関の養成課程を修了すると、基礎試験が免除されます。応用試験に合格し、実践研修を修了します。実践研修と一体になった養成課程を修了した場合は、実践研修も免除です。修了見込みでも出願できますが、その場合は合格点を取っても「仮合格」で、令和9年4月30日までに修了証書の写しを出す必要があります。

経過措置のルート(C・D-1・D-2・E-1・E-2・F)

制度が変わる前から日本語教育に関わってきた人のために、試験や実践研修の一部または全部を免除する「経過措置」があります(令和8年度 試験案内)。

  • C ルート: 必須の教育内容50項目に対応した養成課程等を修了し、学士以上の学位がある人。現職者に限りません。基礎試験と実践研修が免除で、応用試験を受けます。講習は不要です。
  • D-1・D-2 ルート: 現職者で、以前の基準の養成課程等を修了し、学士以上の学位がある人。基礎試験と実践研修が免除で、応用試験を受けます。D-1 は講習Ⅱ、D-2 は講習Ⅰ・Ⅱの修了が必要です。
  • E-1・E-2 ルート: 現職者で、日本語教育能力検定試験に合格している人。基礎試験・応用試験・実践研修のすべてが免除です。E-1 は講習Ⅰ・Ⅱ、E-2 は講習Ⅱの修了が必要です。それでも合格証書を受け取るために出願し、確認を受ける必要があります(5,900円)。
  • F ルート: 上記に当てはまらない現職者。基礎試験と応用試験の両方を受け、実践研修は免除です。

ここでいう「現職者」は、平成31年4月1日〜令和11年3月31日の間に、法務省告示機関の告示を受けた課程・大学・認定日本語教育機関の認定を受けた課程などで、日本語教員として1年以上勤務した人です。この1年以上の経験は、出願の時点で満たしている必要があります。D・E ルートの講習(経験者講習)も、出願の時点で修了していなければなりません。

誤解の多い点を2つ挙げます。

  • 「検定に受かれば国家試験は免除」ではない: 日本語教育能力検定試験の合格で試験が免除になるのは、現職者で講習を修了した人の経過措置(E-1・E-2)だけです。現職でない人は、検定に合格していても試験ルートなどで受ける必要があります。
  • 学位の要件は「免除」の要件: C・D ルートの学位は学士以上で、短期大学士や高専卒は要件を満たしません。受験そのものには学歴の条件はありません。

現職者の経過措置は令和10年度の試験が最後

経過措置の期間は、原則として令和11年3月31日までです(C ルートだけは令和15年3月31日まで)。登録申請の手引きには、「令和10年度の日本語教員試験が現職者の経過措置適用を受けられる最後の試験となります」と書かれています(登録日本語教員の登録申請の手引き)。

現職者で、D・E・F ルートを使える可能性がある人にとって、残りの機会は令和9年度と令和10年度の2回です。講習は出願の時点で修了していなければならないので、来年度の出願に間に合わせるには、講習の受講も逆算して進める必要があります。経験者講習はオンデマンドで、受講料は講習Ⅰ・Ⅱが26,400円、講習Ⅱのみが17,600円です(同手引き)。


条件の読み違いで、合格が取り消しになった人も

体験記の中で、ルートの条件がどれほど大事かをいちばんはっきり示していたのが mikazuki_moon さんです。

令和6年度の試験を、基礎試験が免除されるルートで受けて合格点を取りました。ところが、そのルートには、420時間の実習を2025年3月31日までに修了するという条件がありました。本人は「翌年の試験までに実習を終えればいい」と思い込んでいたそうです。本人は「このルールを、私はきちんと理解できていなかったのです」と振り返っていて、期限に間に合わず、結果は「仮合格は取り消しに。」。令和7年度にもう一度受けて合格しています。

試験の勉強に時間を使う前に、自分のルートの条件(何を・いつまでに出すか)を、試験案内の原文で一度確かめておく価値があります。とくに「見込み」で出願した人は、仮合格の書類の提出期限(令和9年4月30日)を手帳に書いておきましょう。


合格の後:実践研修と登録

試験に受かっただけでは、登録日本語教員にはなりません。

  • 実践研修: 試験ルートの人は、登録実践研修機関で実践研修を修了する必要があります。受講資格は、基礎試験の合格者、または養成課程の修了者・修了見込みの人です。費用や期間は機関ごとに違い、公式の一律の額はありません。
  • 登録の申請: 日本語教育機関認定法ポータルで申請し、登録手数料 4,400円 を納めます。申請は随時受け付けています(登録申請の手引き)。

なお、試験ルートで合格した後、経過措置の期間中に現職者の要件を満たした場合は、令和11年3月31日までに登録を申請すれば F ルートの扱い(実践研修が免除)にできる場合があります。合格から登録までの流れと実践研修の探し方は、第10回でまとめます。


受験料と、令和9年度以降の方式

令和8年度の受験料は、受ける科目によって違います(いずれも合格証書の発行手数料を含みます)。

  • 基礎試験と応用試験: 18,900円
  • 応用試験のみ(基礎試験免除): 17,300円
  • 受験科目なし(基礎・応用とも免除): 5,900円

方式も変わろうとしています。令和8年度は従来どおり紙の試験ですが、試験案内には令和9年度以降について、コンピュータで受ける CBT 方式への移行を検討していると書かれています。その参考として 令和9年2月に CBT 方式の試行調査(プレテスト) を行う予定で、これは本試験とは別のもので、合格・不合格の判定はありません。詳細は令和8年10月頃に公表される予定です。令和9年度の日程や方式は、まだ発表されていません。


読者別:いま確かめておくこと

11月8日に受ける人(本番まで40日)

  • 自分が受ける科目を確かめる: 基礎から受けるのか、応用だけなのか。基礎試験が免除の人は入室が12:00〜13:00です。
  • 受験票は10月中旬(予定): マイページから PDF で発行され、郵送はありません。A4 で印刷して持っていきます。スマートフォンの画面で見せることはできません。
  • 基礎から受ける人は、区分の穴をふさぐ: 基礎試験が届かなければ応用は採点されません。総合点より先に、6割を割りそうな区分がないかを確かめるのが直前期の優先順位です。
  • 「見込み」で出願した人: 仮合格の書類の期限(令和9年4月30日)を確認しておきます。

来年度(令和9年度)以降に受ける人

  • まず自分のルートを決める: 現職者かどうか、養成課程を修了しているか、学位があるかで、受ける科目が変わります。現職者の経過措置は令和10年度の試験が最後です。
  • 日程・方式は未発表: CBT への移行は検討中で、令和9年2月にプレテストの予定です。10月頃の発表を待って計画を立て直す余地を残しておきましょう。
  • 試験ルートなら、勝負は基礎試験: 範囲は5区分の必須の教育内容です。本番まで時間がある人ほど、1割しか出ない区分まで含めて全体を回す計画が立てやすくなります。

まとめ

  • 日本語教員試験は、文部科学大臣が行う国家資格「登録日本語教員」の試験。受験資格は不問
  • 基礎試験(120分・100問)と応用試験(読解100分・60問+聴解約50分・50問)。すべて選択式
  • 基礎試験は「各区分6割程度」かつ「総合8割程度」。基礎が届かなければ応用は採点されない
  • ルート(試験・養成機関・C・D-1・D-2・E-1・E-2・F)で、受ける試験と実践研修の有無が変わる
  • 現職者の経過措置は令和10年度の試験が最後。条件の読み違いで合格が取り消された人もいる
  • 令和9年度以降は CBT への移行を検討中。日程・方式は未発表

次回の第3回は、合格率の読み方 です。「合格率は約7割」という数字が、なぜ基礎から受ける人の実感と大きくずれるのか。免除の有無やルート別の数字を、令和6年度と令和7年度で比べながら整理します。


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※この記事は2026年9月28日時点の公開情報をもとにしています。試験の日程・受験料・ルートの要件などは変更されることがあるため、受験の前には必ず文部科学省の公式サイトと試験案内で最新の情報を確認してください。体験記の引用は各筆者の原文から行い、出典を明記しています。

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