日本語教員試験の体験記33人を分析 受かる人と落ちる人の違い

日本語教員試験の合格率は、令和7年度で67.5%でした。数字だけを見ると「3人に2人が受かる試験」です。
ところが、この数字には経過措置で試験を受けずに合格扱いになった人(全試験免除者)が含まれています。基礎試験から受けた人に限ると、合格率は令和6年度が9.3%、令和7年度が35.7%です(文部科学省 令和6年度実施結果・令和7年度実施結果)。実際に受けた人の体験記も、印象はかなり厳しめです。
この連載では、note・個人ブログなどに公開されている日本語教員試験の体験記のうち、結果(合否)がわかる33人分 を読み込み、文部科学省の公式情報と突き合わせて、合格に効くやり方を全10回で整理します。33人のうち25人は1回目で合格した人、8人は不合格を経験した人(うち4人は翌年に合格)です。【PR】の印は、アフィリエイトや講座・有料記事への案内がある記事です(引用は勉強のやり方の部分だけで、教材や講座の紹介は使っていません)。
最初に書き手のことを少しだけ。書いているのは、資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っているチームです。日本語教員試験の500問を作っている立場から、この33人の体験記を一本ずつ読みました。いちばん目についたのは、基礎試験の点数がわかる不合格者4人のうち3人が、合格ラインの 「あと5点」 前後で止まっていたことです。基礎試験は5つの区分のどれか1つでも6割程度に届かないと不合格になるので、私たちのアプリの問題も、5区分を公式の出題割合に合わせて配分しています。
第1回の今回は全体像として、「受かる人」と「落ちる人」を分けたポイント をまとめます。令和8年度の試験(11月8日)に出願済みの人は本番まで41日、来年度に受ける人はこれから準備を始める段階です。最後にそれぞれの人に向けた次の一歩も書きます。
まず押さえたい、日本語教員試験の姿
体験記を読む前に、試験の形を確認しておきます。
- 国家資格「登録日本語教員」の試験: 文部科学大臣が行う試験で、年齢・学歴・国籍などの受験資格はありません。実施はまだ2回だけ(令和6年度=2024年11月17日、令和7年度=2025年11月2日)で、今回読んだ体験記はすべてこの2回の紙の試験のもの です。
- 基礎試験: 120分・100問。応用試験: 読解100分・60問と聴解約50分・50問。どちらも選択式のマークシートで、記述式はありません。
- 合格基準: 基礎試験は「必須の教育内容で定められた5区分において、各区分で6割程度の得点があり、かつ総合得点で8割程度の得点があること。」、応用試験は「総合得点で6割程度の得点があること。」です(令和8年度日本語教員試験実施要項)。年度ごとの難易差で調整することがある、とも書かれています。
- 基礎試験が先: 基礎から受ける人は、基礎試験が合格点に届かないと応用試験は採点されません。文部科学省も「基礎試験の合格または免除を得なければ、応用試験に合格することはできません。」と書いています(文部科学省 日本語教員試験に関すること)。
令和8年度の試験は 2026年11月8日(日)、結果の通知は12月18日(金)の予定です。出願はすでに締め切られていて、受験票は10月中旬(予定)にマイページで発行されます(令和8年度 試験案内)。
冒頭の合格率について、ひとつだけ注意があります。基礎から受けた人の合格率は、令和6年度の9.3%から令和7年度の35.7%へ大きく変わりました。どちらか一方を「日本語教員試験の合格率」として見ると判断を誤りますし、令和8年度がどちらに近くなるかは公式には何も示されていません。合格率の読み方は、第3回でくわしく扱います。
33人はどんな人たちか
読み込んだ33人の内訳は次のとおりです。
- 1回目で合格した25人: 基礎試験から受けた(試験ルート)11人、基礎試験が免除で応用試験だけ受けたと明記している10人、本文にルートの記載がない4人
- 不合格を経験した8人: 基礎試験の点数で落ちた4人、点数が本文にない3人、合格したあとで受験ルートの条件を満たせず取り消しになった1人。8人のうち7人は令和6年度の受験です
経過措置によって、基礎試験が免除になる人、両方とも免除になる人がいます。基礎から受ける人と、応用だけ受ける人では、必要な対策が違います。この連載では、特に断りのない限り「基礎から受ける人」を中心に書き、応用だけの人に関係する話はその都度分けて書きます。

受かる人に共通していた5つのこと
1. 問題を解く量で仕上げ、間違えた問題に集中している
合格者の多くは、読むだけで終わらせず、問題を解いて間違えたところを潰すサイクルを回していました。
予備知識ゼロから独学で合格した meiphan さんは、後半の1か月で問題集2冊を2回ずつ解き、間違えた問題だけ解説をノートに写して集中的に復習しています。書いているのは、次のひと言です。
「解ける問題をいくら何度も解いても、得点力は一切上がりません。」
ほかにも、範囲の5割を覚えたら問題集を解き漁る、最初に問題集で傾向を知って苦手だけ戻る、直前1か月は過去問中心にする、といったやり方が並んでいました。
間違えた問題だけを解き直す流れは、私たちのアプリにも入れています。「間違えた問題だけ」「未回答だけ」に絞って出題でき、忘却曲線に沿って復習の問題が自動で出てきます。解いた問題を何度も回すより、落とした問題に時間を使う、という合格者のやり方に合わせた作りです。
2. 「説明できるか」で理解を確かめている
合格者に目立ったのが、「知っている」ではなく「説明できる」を基準にしていたことです。太字の語句を自分の言葉で説明できるかどうかで判定した人、AIを相手に自分の言葉で説明を書いた人がいました。
令和6年度に不合格になり、令和7年度に基礎89点で合格した mcylio さんは、問題の答えについて、なぜこの答えなのか、ほかの選択肢はなぜ違うのかを、「家で飼っている猫を相手に授業をするような気持ちで」説明していたそうです。
逆に、令和7年度に基礎75点で不合格だった にんじんけーき さんは、反省点として「「人に説明できるレベル」まで落とし込めていなかった」と書いています。
私たちのアプリの解説は、全問で「正解の理由」と「各選択肢の正誤」まで書いています。解説の用語をタップすると専用の用語辞書が開くので、本を別に用意しなくても、「ほかの選択肢がなぜ違うか」まで確かめられる設計です。
3. スキマ時間で量を積んでいる
仕事や子育てをしながら受けた人が多く、昼休み・通勤・家事の合間を勉強時間に変えていました。通勤や家事中も含めて毎日の時間を手帳に記録した人、間違えた問題をまとめたノートを移動中に見返した人、通勤中に聴解の練習を毎日続けた人がいます。
スマホのクイズや単語テストを補助に使った合格者も4人いました。ただし、あくまで補助としての使い方です。meiphan さんは、スマホでのスキマ学習を合計時間に入れていないと断っています。
「このスキマ時間学習は試験勉強150時間のカウント外です。」(meiphan)
4. 音声分野を毎日少しずつ続けている
基礎試験の「言語」の区分には、アクセント・調音点・調音法といった音声の問題が含まれ、応用試験の聴解にもつながります。合格者は、ここを毎日少しずつ続けていました。
- 調音点・調音法の表を、毎日3分×3回、何も見ずに書く
- 口の中の断面図を手作りのカードにして、言えるまで繰り返す
- 聴解の音声を1.5〜2倍速で聞き、1回だけ聞いて答える練習をする
「リスニングは、1.5倍速で聞いてました。」と書いている合格者もいます(嘉成【PR】)。反対に、音声分野を後回しにして回り道をした、と振り返る合格者もいました。
ここは正直に書いておきます。私たちのアプリの日本語教員試験の問題は、基礎試験の5区分の文字の問題で、聴解(音声)の問題は入っていません。アクセントや調音、誤用の用語といった知識はアプリで固められますが、音声を聞いて答える練習は、上のような方法で別に続ける必要があります。
5. 本番の形で練習している
合格者の中には、直前期にマークシートで解き、1問の時間を決めて練習した人がいます。
「迷う問題は印をつけて後回しにする練習も重ねました。」(kokoro【PR】)
基礎試験は120分で100問、1問あたり約72秒です。時間を区切って解く練習をしておくと、本番で迷う問題に時間を取られにくくなります。私たちのアプリの本番形式テストでは、いまの合格率と、どのカテゴリが弱いかをグラフで確かめられます。区分ごとに6割程度の基準がある試験なので、弱い区分を早めに見つけることが大切です。

落ちる人・苦戦した人に共通していた5つのこと
1. 基礎試験で「あと5点」届かない
いちばんはっきりしていたのが、この型です。基礎試験の点数がわかる不合格者4人のうち、3人が74〜75点 でした。

令和6年度に独学で受けた 日本語教師の卵 さんは、「基礎試験が100点中75点で、80点のボーダーは越えられませんでした。」と書いています(80点は本人の記載で、公式の基準は「8割程度」)。この人は、準備の段階で過去の問題で8割近くまで取れるようになっていましたが、本番では届きませんでした。基礎が合格点に届かないと、応用試験は採点されません。基礎から受ける人の勝負は、ほぼ基礎試験 です。
2. 理解が表面的なまま・勉強時間が足りない
前述のにんじんけーきさんは、約3か月(実質2か月)の準備で受け、「勉強時間が圧倒的に足りていなかった」と振り返っています。合格した人の中にも、9月から始めて間に合ったものの「9月から勉強すんなよ!」と書いた人がいます(o35xk)。用語を見たことがある状態と、選択肢の違いを説明できる状態の差が、そのまま点数の差になっていました。
3. 基礎試験で時間が足りない
文法の問題で時間を使いすぎて、「気がつくとあと残り1時間でまだ60問近く残っていました」という体験記もあります(fujita1339)。基礎試験は区分ごとに基準があるので、1つの難問に時間をかけて、ほかの区分の問題を解き残すのがいちばん危険です。時間配分は第9回でくわしく扱います。
4. 受験ルートの条件を読み違える
令和6年度に基礎免除のルートで合格したのに、養成講座の実習を修了する期限を読み違え、「仮合格は取り消しに。」となった人がいます。本人は「このルールを、私はきちんと理解できていなかったのです」と書いています(mikazuki_moon)。経過措置やルートには細かい条件があるので、自分のルートの要件と期限は、必ず公式の案内で確かめてください。ルートの仕組みは第2回で整理します。
5. 油断・記念受験
令和6年度に基礎59点で不合格になった人は、同じ年に別の試験も受けていて、「正直なところ、わたしは検定試験が終わって気が抜けていた気がします。」と振り返っています(ゆき【PR】)。「第一回は記念受験で落ちて、」と書いた人もいました(jero_teacher)。2人とも、翌年は準備を変えて合格しています。
勉強時間を書いていた合格者は4人だけ
体験記で合計の勉強時間をはっきり書いていた合格者は、25人中4人だけでした。
- 150時間: 予備知識ゼロ・独学・2か月(meiphan)。「直前2か月間・独学150時間で一発合格できました。」
- 500時間超: 約8か月(kokoro【PR】)
- 約550時間: 独学(nihongo_kyoin【PR】)
- 650時間以上: 応用試験のみ・通勤や家事中も含む(嘉成【PR】)
人数が少なく、「超」「以上」を含む数字なので、平均は出しません。150時間の人と500時間を超えた人が同じ試験ルートで合格しているように、時間の長さだけで合否は決まっていません。差を生んでいたのは、ここまでに挙げた 「問題を解く量」「説明できるかの確認」「音声を毎日」 でした。勉強時間と計画の立て方は第4回で扱います。
教材について、先に1つだけ
日本語教員試験には、公開された過去問がありません。試験問題は持ち帰れず、記憶による再現を含めて公開・共有が禁止されています。公式に出ているのは試行試験の一部のサンプル問題だけです。そのため、体験記では出題範囲の近い別の試験の過去問で代用していた人が大半でしたが、問題の形式・問数・時間は違います。
また、33人の中に、アプリだけで合格したと書いた人はいませんでした。アプリは補助として使われていた例だけです。そのうえで私たちは、全問の解説と用語辞書があれば、本を別に用意しなくても理解まで進められるように、日本語教員試験の500問を作っています。教材を選ぶときの基準は第5回で整理します。
令和8年度を受ける人へ/来年度に受ける人へ
11月8日に受ける人(本番まで41日)
- まず区分ごとの得点を確かめる: 基礎試験は区分ごとに6割程度の基準があります。総合点より先に、6割に届かない区分がないかを見る
- 間違えた問題に時間を使う: 解ける問題を回すより、落とした問題の解き直しを優先する
- 音声は毎日少しずつ: 聴解は最後の枠です。音声を聞く練習を毎日の予定に入れる
- 本番の時間で通して解く: 1問あたり約72秒の感覚を、一度は時間を測って確かめておく
受験票は10月中旬(予定)の発行です。A4で印刷して持参する必要があるので、発行されたら早めに確認しておきましょう。
来年度(令和9年度)に受ける人
令和9年度の日程と方式は、まだ発表されていません。文部科学省はCBT方式への移行を検討していて、令和9年2月にCBTの試行調査(合否判定なし)を予定し、詳細は令和8年10月頃に公表予定としています(令和8年度 試験案内)。現職者向けの経過措置は、令和10年度の試験が最後です。
まずは、自分がどのルートで、基礎試験から受けるのかどうかを確かめるところから始めてください。そのうえで、今回の「受かる人の型」を、早い時期から少しずつ積み上げていくのが近道です。
まとめ:基礎試験の「あと5点」をどう越えるか
33人の体験記から見えたことを、ひと言ずつまとめます。
- 基礎から受ける人の勝負は 基礎試験。不合格者は74〜75点に集まっていた
- 合格者は 問題を解く量 で仕上げ、間違えた問題 に時間を使っていた
- 「知っている」ではなく 「説明できる」 を基準にしていた
- 音声分野は毎日少しずつ。後回しにすると回り道になる
- 受験ルートの 条件と期限 は必ず公式で確認する
連載の第2回では、「日本語教員試験の仕組み」として、基礎試験・応用試験の中身、免除のルートと経過措置を整理します。
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※この記事は2026年9月28日時点の公開情報をもとにしています。試験の制度や日程は変わることがあるので、受験前に必ず文部科学省の日本語教員試験のページで確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。