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メンタルヘルス・マネジメント検定I種 論述の山の張り方

公開 ・ ナレッジバンドル編集部

メンタルヘルス・マネジメント検定I種 論述の山の張り方

メンタルヘルス・マネジメント検定 I種の攻略シリーズ、第7回です。この連載は、第1回でI種の受験者33人の合格・不合格体験記を読み込み、主催者(大阪商工会議所)の公式情報と突き合わせて書いています。

前回は、論述で25点を取るための「キーワード → 文章化」の書き方を整理しました。書き方の型ができても、何を覚えておくか が外れていれば、本番でキーワードが出てきません。今回は、合格者がどうやって論述の「山」を張っていたのか、そして2026年度(第41回・11月1日)ならどこに山がありそうかを、公式の出題基準と厚生労働省の一次資料から考えます。

先に断っておくと、論述の問題・テーマ・採点基準は主催者が公表していません。この回に出てくる過去のテーマ一覧や「山の張り方」は、すべて民間の分析と受験者の体験記です。当たる保証はありません。そのうえで、合格者の多くが何らかの形で優先順位を付けていたのは事実です。

私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていて、I種では選択問題の形式の500問を用意しています(論述の練習は入っていません)。山の候補になる指針や法改正の論点は、選択問題でも言い回しを変えて問われます。解説で正解の理由だけでなく各選択肢の正誤まで書いているのは、そうした論点を選択肢ごとに確かめられるようにするためです。


過去の論述テーマ:民間の一覧から見えること

主催者のサイトに載っているのは選択問題の正解番号だけで、論述の問題文もテーマも公開されていません。

ここでは、受験者の RoyalBlueJP さんが note にまとめた2017〜2023年の論述テーマを、テーマ名だけ図にしました。問題文は載せていません。

2024年(第37回)と2025年(第39回)のテーマは、Web上の民間の一覧では確認できませんでした。そのうえで、この7回分から読めることは3つです。

1. 制度・法令・国の指針に関わるテーマが毎回のように入っている

ストレスチェック制度(2017年)、パワーハラスメントの定義と類型(2018年・2020年)、女性活躍推進法(2020年)、情報通信機器を使った面接指導(2021年)、テレワーク(2022年)、治療と仕事の両立支援(2022年)。どの年にも、国の制度や指針に直接つながるテーマが少なくとも1つあります。

時期の重なりも目を引きます。パワハラの防止措置は大企業で2020年6月から義務になり(厚生労働省)、同じ2020年の第29回の論述にパワハラが出ました。ストレスチェック制度は2015年12月に始まり、2017年に出ています。RoyalBlueJP さんも、大きな法改正や制度の変更があった場合は出題される確率が高い、という見立てを書いています。

2. 理論・モデルと、現場の対応も毎回ある

もう一方の柱は、NIOSH職業性ストレスモデル、ストレスとコーピング、ポジティブヘルス、アブセンティーズムとプレゼンティーズムといった理論・用語と、部下からの相談対応、自殺の危険への対応、事例性と疾病性といった現場での対応です。制度のテーマだけに絞ると、こちらで点を落とします。

3. 「一度出たら出ない」には例外がある

パワハラは2018年と2020年に続けて出ています。問われ方は近く、どちらも定義と類型が中心でした。2020年はちょうど防止措置の義務化の年でもあります。「過去に論述で出た論点は後回し」という合格者の方法(次の章)は、法改正などで再び注目された論点には当てはまらない と考えたほうが安全です。


合格者の山の張り方:5つの型

体験記を読むと、山の張り方はだいたい次の5つに分かれます。

1. 過去に論述で出た論点は「後回し」にする

2022年に論述36点で合格した 上田晃穂 さん(有料記事の無料部分)は、過去の論述を分析し、同じ論点が「再度「論述問題」で出題される可能性は非常に低い」と書いています。過去問の論述で出た箇所には印を付けて区別し、新しいトピックに山を張りました。2024年に論述39点で合格した ねぎ さんも、直近4年分の論述を解いたあとは「同じお題は出ない」と割り切っています。

ただし、上で見たとおりパワハラのような例外があります。後回しは「捨てる」ではなく「最後に軽く見直す」くらいが無難です。

2. 改訂で新しく入った内容を優先する

2022年に合格した こか さん(論述対策の note を販売している筆者です)は、新旧の版を並べて改訂箇所に付箋を貼り、そこを優先しました。理由は「改訂箇所=鮮度が高い内容であり、選択式・論述式問わず、出題されやすい傾向です。」。第5版で追加された治療と仕事の両立支援の比重を上げて作文まで練習したところ、「そしたら、たまたま論述問題で出されたではないですか!」という結果になりました。上の図の2022年の両立支援がそれです。

2024年に合格した しゅり さんも、「改訂された部分がバッチリ出た」と書いています。こちらは択一(選択問題)についての感想です。

3. 法改正・国の新しい指針を押さえる

ねぎさんは、テキストの出版後に改正された法律も試験に出るとして、公式サイトに載る改訂情報を確認するよう勧めています。自分が受けた2024年にも出たそうです。2025年に合格した まーさん さんは、過去問に近年の企業課題や政府が進めるメンタルヘルス施策を問う問題が多いと気づき、政府の指針、支援モデル、段階的な対応が必要な枠組みに絞りました。本人いわく「完全に山張りです。」。

4. 選択問題で出た論点を、論述の材料として見る

上田さんは、過去の選択問題で出た論点が論述に出ることがある、とも書いています(例として第27回のイネイブラー、第33回のストレスコーピング)。選択問題で出た論点の周辺をまとめノートにしました。

つまり、選択問題の勉強は、そのまま論述の材料集めを兼ねます。私たちのアプリでは、全問の解説に正解の理由と各選択肢の正誤が書かれていて、解説の中の用語をタップすると専用の用語辞書が開きます。選択で出会った論点の意味と周辺の言葉を、その場で一緒に確かめられるので、論述で書くキーワードの下地になります。

5. 休憩中は「当日の選択で出なかったテーマ」を見直す

2024年に合格した ひぐ さんは、選択と論述の間の休憩で、見直す範囲に重みを付けました。当日の選択問題で出たテーマと、過去3〜4年の論述で出たテーマは軽く見るだけにして、どちらにも出ていないテーマを重点的に確認 したのです。結果は「私はこれで大問2つとも的中させることができました。」。

4と5は矛盾して見えますが、4は「過去の年の選択問題」、5は「その日の選択問題」の話です。過去の選択で問われた論点は論述の材料として押さえ、当日の選択ですでに出た論点は論述では出にくいと見て後回しにする。両方を組み合わせると、休憩時間の使い方が決まります。


的中した例と、外れた例

山が当たった話だけを並べると、張れば当たるように見えてしまいます。体験記には外れた例も同じくらいありました。

当たった例:

  • ひぐさん(2024年): 休憩中の重み付けで、論述の大問2つとも的中
  • こかさん(2022年): 新旧テキストの比較で見つけた両立支援が論述に出た
  • keen_chimp586 さん(2025年): 休憩中の見直しについて「直前に見た文章が論述試験に出る」ことは実際にあったと書いている。ただし本人は休憩時間をうまく使えなかったことを後悔している

外れた例:

  • しゅりさん(2024年): 過去問と同じ事例付きの問題を予想していたが、本番は「事例がない論述問題でした…」。形式の予想が外れた
  • ラー さん(2024年): ネットで法改正が狙われると言われていたのに、選択では「一切出題されず」。論述も過去問や模擬試験に無い問題だった
  • とちぎグッドメンタル&キャリア さん(2019年・臨床心理士): 1問は依存症の事例で得意分野だったが、もう1問は専門外の「キャリアカウンセリングの社内構築について」だった
  • rakentaa_0729 さん(2025年): 予想していた問題は2問目に出たが、1問目には出てほしくなかった問題が出た

外れた人の中にも、合格した人がいます。とちぎさんは専門外の問題を抱えたまま合格し、しゅりさんも用語問題に切り替えて合格しました。山は「優先順位」であって、山の外を捨ててよい理由にはならない というのが、体験記を並べた結論です。範囲外の問題が出たときの書き方(空欄にしない・知っているキーワードを並べる)は、前回の記事で扱いました。


2026年度の範囲:「4月1日に成立している法令」

ここからは今年度の話です。主催者は、出題の基準を次のように定めています。

ポイントは「施行」ではなく 「成立」 であることです。施行が試験日より後でも、4月1日までに法律が成立していれば範囲に入ります。これに当てはまる法改正を、厚生労働省の一次資料で確認しました。

50人未満の事業場のストレスチェック義務化

これまでストレスチェックは、労働者50人未満の事業場では当分の間の努力義務でした。2025年5月に公布された改正労働安全衛生法で義務化され、施行は2028年4月1日 です(厚生労働省 ストレスチェック制度、山梨労働局)。厚生労働省は小規模事業場向けの実施マニュアルも公表しています(厚生労働省)。施行は2年後ですが、成立はしているので、主催者の基準どおりなら今年度の範囲です。

カスタマーハラスメント防止措置の義務化

2025年6月11日に公布された改正労働施策総合推進法(令和7年法律第63号)で、カスタマーハラスメントの防止措置が事業主の義務になりました。施行は2026年10月1日 で、求職者等へのセクシュアルハラスメント対策の義務化も同じ日です(厚生労働省、厚生労働省リーフレット)。厚生労働省の整理では、顧客等の言動のうち、業務の性質などに照らして社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境が害されるものがカスハラにあたり、この3つの要素をすべて満たすものとされています。

治療と就業の両立支援の努力義務化

同じ改正法により、2026年4月1日から、職場での治療と就業の両立支援の取り組みが事業主の努力義務になりました。あわせて「治療と就業の両立支援指針」(令和8年厚生労働省告示第28号)が定められています(厚生労働省 指針の概要)。両立支援は2022年に論述で出たテーマですが、法律上の位置づけが変わったので、「一度出たから後回し」にはしにくいテーマです。

基準日の後の改正は対象外の見込み

2026年6月30日には、ストレスチェックの集団分析を特定の個人を識別できない方法で行うことを明文化する労働安全衛生規則の改正が公布されました(2027年4月1日施行。厚生労働省 通達)。基準日より後の公布なので、主催者の基準どおりなら今年度の出題対象ではないと考えられます。

注意: 第6版がこれらの法改正をどこまで、どう書いているかは、この連載では確認できていません。「第6版に載っているから出る」とは言えません。ただ、主催者の基準どおりなら、成立済みの法令は第6版での扱いにかかわらず範囲に入ります。上に挙げた厚生労働省の資料で、定義と事業主がすべきことを押さえておくのが確実です。


第6版の新しいテーマ

主催者は、第6版に第5版発行以降の法令等の改正、統計調査の結果の更新、職場のメンタルヘルス対策をめぐる動向を盛り込んだと説明しています(大阪商工会議所のお知らせ)。出版元の紹介文では、新しく取り上げたテーマとして、各種ハラスメントに関する諸問題、小規模事業場のストレスチェック制度の導入、災害時のメンタルヘルスが挙がっています。

今年度にとって大事なのは、過去問はすべて第5版以前の時期の出題 だという点です。市販の過去問題集を今年度版にしても、問題そのものは旧版の時代のものです(第4回を参照)。つまり、第6版で新しく入ったテーマは、過去問を何周しても練習できません。

第5版に切り替わったあとの2022年に、第5版で追加された両立支援が論述に出た、というこかさんの例は、今年の状況によく似ています。第6版の1年目にあたる今年は、新しいテーマと成立済みの法改正を、一次資料で自分で押さえておく価値がいつも以上に高いと言えます。ハラスメントなら厚生労働省の あかるい職場応援団、小規模事業場のストレスチェックなら上に挙げた厚生労働省の実施マニュアルが、無料で読める一次資料です。


今年の山の優先順位(この連載の提案)

ここまでの材料から、2026年度の論述の山を優先順位にすると次のようになります。公式の根拠がある順位ではなく、体験記と出題基準を組み合わせた この連載の提案 です。

  1. 第6版の新テーマ(各種ハラスメント、小規模事業場のストレスチェック、災害時のメンタルヘルス)と、基準日までに成立した3つの法改正。厚生労働省の一次資料で、定義・要素・事業者がすべきことを列挙できるようにする
  2. 国の指針の骨格(4つのケア、心の健康づくり計画、職場復帰支援の5つのステップ、ストレスチェック制度)。どのテーマが出ても施策を書く土台になる
  3. 選択問題でよく問われる理論・用語(選択の問題演習で解説と用語を確かめ、前回の書き方の型でキーワードを書き出せる状態にする)
  4. 過去の論述で出たテーマ。後回しにするが、法改正で位置づけが変わった両立支援とハラスメントは例外として2に入れる

本番の休憩中は、ひぐさんの方法にならって、当日の選択で出たテーマを軽く見るだけにし、出なかったテーマを見直す。これで直前の数十分の使い方も決まります。


まとめ:山は「順番」で、外れたときの準備とセット

  • 論述のテーマは公式非公開。民間の一覧では、制度・法令・国の指針のテーマと、理論・現場対応のテーマが毎回混ざっている
  • 合格者の山の張り方は、過去の論述は後回し・改訂箇所・法改正と新しい指針・選択で出た論点・休憩中の見直しの5つ
  • 的中した例と同じくらい外れた例がある。山の外でも白紙にしない準備 とセットで使う
  • 2026年度は 4月1日時点で成立した法令 が範囲。50人未満のストレスチェック義務化、カスハラ防止措置の義務化、両立支援の努力義務化が当てはまる(第6版での扱いは未確認)
  • 過去問は第5版以前の出題なので、第6版の新テーマと成立済みの法改正は、厚生労働省の一次資料で自分で拾う

次回の第8回は、今回の優先順位で2番目に挙げた「国の指針の骨格」を、厚生労働省の一次資料で押さえます。4つのケア、心の健康づくり計画、ストレスチェック制度、職場復帰支援の5つのステップを、論述で使える形に整理します。


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※この記事は2026年9月24日時点の公開情報をもとにしています。試験の制度や出題基準、法令の施行日は変わることがあるので、受験前に必ずメンタルヘルス・マネジメント検定試験 公式サイトと厚生労働省のページで確認してください。論述のテーマ・形式・採点は公式には公表されておらず、この記事の該当部分は民間の分析と体験記にもとづいています。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。

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