メンタルヘルス・マネジメント検定I種 論述で25点を取る書き方

連載「メンタルヘルス・マネジメント検定 I種 攻略シリーズ」の第6回です。第1回では、I種の合格・不合格体験記33人分を読み込み、合否を分けるのは論述だとお伝えしました。
今回は、その論述そのものを扱います。論述は50点満点で、25点に届かなければ、選択問題が満点でも不合格 です。体験記を読むと、合格者の論述の点数は26点・28点・30点など、25点すれすれが目立ちます。
同じように「書いた」のに、25点を超える人と超えない人がいます。この回では、合格者が実際にやっていた 「キーワードを書き出す → 文章にする」という書き方の型 と、埋めても点にならない答案の特徴を整理します。
私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていますが、アプリで練習できるのはI種の選択問題の形式の500問までで、論述の答案は入っていません。ただ、論述で書くキーワードの多くは、選択問題の勉強でも出てくる言葉です。解説の用語をタップすると専用の用語辞書が開くようにしているのは、選択を解きながら言葉の意味まで押さえられるようにするためです。
論述について、公式に分かっていることは少ない
まず、主催者の大阪商工会議所が公表していることを確認します。
- 配点と時間: 選択問題100点(2時間)のあと、休憩をはさんで論述問題50点(1時間)(公式「試験のご紹介」)
- 合格基準: 合計105点以上、かつ論述25点以上。論述が25点ちょうどなら、選択で80点が必要です。論述35点なら選択70点で届きます
- 問うもの: 「実務を遂行するうえで必要な知識とその応用力、総合的判断力などを問います」(同上)
- 模範解答: 「I種論述問題の模範解答の発表はありません」(公式「個人申込」)。答案の開示や採点に関する問い合わせにも応じていません
つまり、論述の問題数・字数・採点基準は、どれも公式には公表されていません。以下に書く形式や採点の見方は、すべて受験者の体験記や民間の対策サイトの情報です。そのつもりで読んでください。
論述の形式:体験記と民間の情報から
受験者の報告を集めると、形式はおおむね次のようなものです。
- 大問2つ、設問は合わせて4問程度。2025年に合格した まーさん は、大問2問(各2設問)を60分で解いたと書いています
- 字数は1問250〜350字程度。2024年に合格した mynote_k さんは「250字、350字、250字」程度の設問が並んだと書いています。2022年に合格した モン さんは、合計で「1時間で1200字近くの文章を書くのは」大変だと振り返っています
- キーワードの指定や字数の指定がある問題。民間の対策サイトでは、指定されたキーワードを使って答える問題があり、字数が指定されていることも多いと説明されています
- 〜について●個ポイントを挙げる型。おざわ さんは、過去問を見てこの形の問題が多いと気づいたと書いています
ただし、年によって形は変わります。事例問題を予想していたのに事例のない用語問題が出た(しゅり さん、2024年)、覚えていた図表を説明する問題が出た(yy_mogu さん、2025年)、具体例をモデルに当てはめる問題が出た(witty_mango522 さん、2021年)という報告があります。特定の形式に決め打ちしない ことが前提です。
合格者の手順は「設問 → キーワード → 文章化 → 点検」
体験記の書き方をまとめると、ほぼ次の4段階になります。

1. 設問を読み、何を問われているかを決める
最初にやるのは、設問が「列挙」を求めているのか、「手順」なのか、「施策」なのかを見分けることです。2023年に合格した じょにー さんは、まず設問だけを読んで書けるかどうかを判断し、事例文は後回しにして、書ける設問から書いたそうです。
「わたしは瞬発力が大事だと思いました。」
ただしじょにーさんは、これは選択問題で80点以上取れる場合の話だと断っています。
2. キーワードを余白に書き出す
次に、答えに入れる言葉を問題用紙の余白に並べます。2022年に合格した こか さん(人事労務の担当者。論述対策のノートを販売している方です)は、指定字数の3〜5%ほど、400字なら15個程度 のキーワードを拾い出してから文章にしていたと書いています。数はあくまで本人の目安です。
mynote_k さんも、下書き用紙は使わず、問題用紙にキーワードを並べて字数を見積もったそうです。yy_mogu さんは問題文に直接キーワードを書き込みました。
3. キーワードをつないで文章にする
キーワードがそろえば、文章化はそれほど難しくない、とこかさんは書いています。2024年に合格した たなぼう さんは、書き方に3つのルールを決めていました。
- 「〇〇については以下の通りである。」でまとめてから列挙する
- キーワードごとに、概要・手順・メリットとデメリットを答えられるようにしておく
- 手順を聞かれたら、心の健康づくり計画をもとに答える
同じく2024年に合格した ひぐ さんは、書く内容の優先順位を松竹梅で整理していました。松はテキストの文言どおりに書く、竹はキーワードをつなげて自分の言葉で書く、梅は関連することを絞り出して書く、という順です。
4. 点検する
こかさんの当日の流れは、キーワードの書き出しに5分、問題文を読んで15分から書き始め、45分で残りを埋め、55分で見直し、というものでした。見直しでは、設問に答えているか・指定されたキーワードを使ったか・字数 を確かめます。おざわさんは、本番で漢字を何か所かひらがなで書いてしまったと振り返り、手で漢字を書く練習を勧めています。
書き方の型を比べる
「論述の型」は、対策サイトや合格者によってさまざまに提案されています。代表的なものを並べました。

- 一般的な流れ: 結論 → 理由 → 再び結論。論述問題の一般的な流れとして、民間の対策サイトで紹介されている型です
- 合格者の手順(こかさん): 設問を読む → キーワードを列挙 → 文章化。書く中身ではなく、作業の手順の型です(こかの投資ブログ)
- 施策型A: 課題認識 → 方針 → 対策 → 連携 → 実施計画(PDCA)。民間の対策記事で紹介されている答案の骨子です
- 施策型B: 問題の分析・背景 → 具体的な対策案 → 実施方法・手順 → 期待される効果 → 評価・改善方法。これも民間の対策記事の構成です
どれも主催者のお墨付きがあるわけではありません。そのうえで、型の選び方は設問の種類で分けるのが実用的です。
- 「●個挙げよ」「〜とは何か」の設問: こかさんの手順とたなぼうさんの列挙型で足ります。施策型の5段構成を毎回当てはめると、250字程度の設問では字数が足りなくなります
- 「施策を述べよ」「計画を立てよ」の設問: 施策型A・Bのような型が役に立ちます
後者の型は、厚生労働省の 労働者の心の健康の保持増進のための指針 の組み立てとよく重なります。指針は、心の健康づくり計画 → 4つのケア(セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケア)→ 具体的な進め方(教育研修・情報提供、職場環境等の把握と改善、メンタルヘルス不調への気付きと対応、職場復帰における支援)→ 個人情報の保護と不利益取扱いの防止、という順に並んでいます。主催者は、各コースの内容をこの指針を参考に作ったと説明しています(公式「試験のご紹介」)。
施策を問われたら、この順に「計画・体制」「4つのケアのどれか」「連携先」「評価と見直し」が抜けていないかを点検する。民間の型を覚えるより、一次資料の骨組みで点検するほうが根拠がはっきりします。
また、I種の到達目標は「メンタルヘルスケア計画、産業保健スタッフや他の専門機関との連携、従業員への教育・研修等に関する企画・立案・実施ができる」ことです(公式)。不合格を経て合格した bold_broom6276 さんは、自分の意見ではなく経営者の視点で、組織単位の答えにすることに気づいたと書いています。
「経営者的視点からの解答を求められている!」
下書きはしない。書ける設問から書く
体験記の字数から見ると、60分で850〜1,200字ほどを手で書くことになり、時間に余裕はありません。合格者の多くが 下書きをせず、解答用紙に直接書いた と書いています。
- 「下書きに時間をかけている場合ではありません。」(ツシマ。2023年度に論述30点で合格)
- 「下書きはせず解答用紙に直接記入しました。」(たなぼう)
- 「下書き用紙に書いてる暇などほぼ無く」(mynote_k)
ツシマさんは、下書き用紙に清書前提で書くのは「検定最大のトラップ」だとまで書いています。
ただし「何もメモしない」わけではありません。ひぐさんは設問を見て大まかな構成とキーワードを書き出してから解答用紙に書き、制限時間の5分前に書き終えました。文章の下書きはしない、キーワードのメモだけ作る というのが、体験記に共通するやり方です。
空欄を作らない
25点の基準がある以上、白紙の設問を作るのは大きな損です。
- こかさんは、大問1つが丸ごと分からなかったものの合格しています
- たなぼうさんは、見たことのない論点が出た設問も、空欄にせず知っていることを書き並べました
- witty_mango522 さんは、分からないEAP(従業員支援プログラム)の問題を実務の経験から書いて部分点をねらい、論述35点で合格しました
- ひぐさんは「完璧に書くことは諦めて」「書いたもん勝ち!の精神でいきました。」と書いています
反対に、2025年に合格した keen_chimp586 さんは、最後の問題が半分ほど空欄になりました。何分で何文字書くという本番形式の練習をしていなかったことを反省しています。時間内に書き切る練習は、第9回でくわしく扱います。
埋めても22点:設問に答えているか
ただし、埋めれば点になるわけではありません。
2025年に受験した社労士の nyankichi さんは、選択問題(マーク)が90点だったのに、論述が22点で不合格になりました。
「筆記であと3点足りませんでした。」
解答用紙はすべて埋めていて、本人は「的外れなことを書いてしまったのだろう」と振り返っています。
産業保健師の nice_prawn2607 さんも、2024年は時間いっぱい書き切って合格したと思っていたのに不合格でした。本人は原因を「記述対策が甘かった」とし、答案が 設問に答えていない・抽象的でぼやけている・キーワードが不足している・採点者が点を入れにくい構造 だったと分析しています。翌年、同じ2週間の準備で合格しました。
採点はキーワードの数で決まる、という見方は体験記に多く、58歳でI種に合格した産業カウンセラーの cool_violet5789 さんも「論述問題はとにかくワード重視!」と書いています。ただし採点基準は公表されていないので、これは受験者の推測です。22点の例と合わせて読むと、点になるのは「設問が求めていることに対応したキーワード」 と考えるのが無理のないところです。
答案を書いたら、次の3点を確かめてください(編集部の整理)。
- 設問の言葉(「●個」「手順」「留意点」など)に、答えの形が合っているか。「3つ挙げよ」なら3つがはっきり分かれているか
- 「適切に対応する」「連携を図る」のような抽象的な言い方で終わっていないか。誰が・何を・どうするかまで書いたか
- 指定されたキーワードを、全部使ったか
書く材料は、前もって頭に入れておく
キーワードは、その場でひねり出すものではありません。合格者は、書く材料を前もって頭に入れていました。
- 番号付き・箇条書き・表になる事柄を覚える: おざわさんは「●個挙げよ」型が多いと気づき、番号付きの項目や表を、書いたり音読したりして覚えました。産業保健師だった ねぎ さんは、列挙できる事柄(たとえばパワハラの6類型)をすべてノートに書き出し、赤シートで隠して覚え、論述39点で合格しています。6類型は厚労省の あかるい職場応援団 でも確認できます
- 図表を何も見ずに描けるようにする: ツシマさんは復職のステップ、witty_mango522 さんと 一人語り さんはNIOSH職業性ストレスモデルの図を、何も見ずに描けるまで練習しました
- 関連するキーワードでまとめる: mynote_k さんは情報カードをキーワードの関連ごとに整理し、本番でワーク・エンゲイジメントと仕事の要求度-資源モデルの両方が出たときに役立ったそうです。「関連するキーワードごとにしたのが大正解!!」と書いています(対策まとめ)
こうしたキーワードの多くは、選択問題の勉強の中で出会う言葉です。私たちのアプリでは、全問の解説に正解の理由と各選択肢の正誤が書かれていて、解説の中の用語をタップすると専用の用語辞書が開きます。選択問題を解きながら、論述で使う用語の意味と周辺の言葉を一緒に確かめられるので、mynote_k さんのように関連するキーワードごとにまとめる作業の材料にもなります。
指針や手引きの骨組み(4つのケア、職場復帰支援の手順など)は、厚生労働省が無料で公開している一次資料で確かめられます(第8回でくわしく扱います)。
今年度(第41回)から出題の基準は第6版に変わり、法令は2026年4月1日時点で成立しているものが基準です。過去の論述問題はすべて第5版以前の時期のものなので、キーワード集を作るときは、今の法令・指針に合った言葉になっているか を確かめてください。

そして、覚えたキーワードを点に変えるのは 手書きの練習 です。4択の問題演習だけでは、60分で1,000字前後を手で書き切る力はつきません。体験記では、方眼ノートや原稿用紙で字数と時間を測って練習した人が6人いました。選択問題はスキマ時間のスマホで仕上げ、机に向かえる時間はこの手書き練習に回すのが、I種の時間の使い方として無駄が少なくなります。
まとめ:論述は「設問に答えるキーワード」を時間内に並べる試験
- 論述の形式・字数・採点基準は 公式には非公表。大問2つ・設問4問程度・1問250〜350字程度というのは体験記の情報
- 手順は 設問を読む → キーワードを余白に書き出す → 文章にする → 点検する
- 「●個挙げよ」は列挙型、施策を問われたら 厚労省の指針の骨組み(計画 → 4つのケア → 具体的な進め方 → 個人情報・不利益取扱い) で漏れを点検
- 下書きはしない。メモはキーワードだけ
- 空欄を作らない。ただし埋めても設問からずれていれば22点になる
- 書く材料(番号付きの項目・図表・用語)は前もって覚え、時間を測った手書き練習 で点に変える
次回の第7回では、論述の「山の張り方」を扱います。過去のテーマの傾向と、第6版の改訂・成立済みの法改正(ストレスチェック、カスタマーハラスメント、治療と仕事の両立支援)から、今年どこを厚くするかを考えます。
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※この記事は2026年9月24日時点の公開情報をもとにしています。試験の制度や日程は変わることがあるので、受験前に必ずメンタルヘルス・マネジメント検定の公式サイトで確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。論述の形式・字数・採点についての記述は、主催者の公表ではなく、受験者の体験記と民間の対策サイトの情報にもとづきます。