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GX検定のコラム第7回 / 全10回

GX検定ベーシック第5章対策:Scope1・2・3とTCFD

公開 ・ ナレッジバンドル編集部

GX検定ベーシック第5章対策:Scope1・2・3とTCFD

「GX検定 攻略シリーズ」の第7回です。第1回では、2025年以降に公開されたGX検定の体験記26人分を読み込み、受かる人と苦戦する人の違いを整理しました。第5回からは、シラバスの章ごとに押さえどころをまとめています。

第7回の今回は、第5章「企業の取組」 です。GHGプロトコル、Scope1・2・3(Scope3は15カテゴリ)、TCFDの4つの開示項目、LCA・CFP、PPAなど、企業が実際に排出量を測って減らし、開示するための知識が並ぶ章です。

この章は、ニュースを追っているだけでは身につきにくい「用語の定義」の比重が大きいのが特徴です。体験記でも、Scope1・2・3 の区別でつまずいた人と、ここを押さえて得点した人がはっきり分かれていました。カテゴリ名や定義は、環境省とGHGプロトコルの一次資料で確認したものだけを載せています。

私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていて、GX検定の500問でも、Scope のような定義を問う問題は、正解の理由だけでなくほかの選択肢がなぜ違うのかまで解説に書いています。定義の区別は、外した選択肢の理由を読むときにいちばん身につくからです。


第5章「企業の取組」で問われる範囲

公式のシラバス(Ver.2.0、2025年8月の試験から適用)では、第5章に次のような項目が並んでいます(GX検定 シラバス・例題)。

  • 脱炭素経営の全体像、気候関連のリスクと機会
  • TCFD提言に基づく4つの開示項目、SSBJ基準に沿った開示に向けたタイムライン
  • GHGプロトコル、Scope1・2・3 の算定(Scope3は15カテゴリ)、電力の排出係数
  • 削減貢献量、LCA、CFP
  • 再エネ調達とPPAの種類、脱炭素ソリューション

主催者は、ベーシックで得られる知識の柱の1つに「排出量算定」を挙げ、「Scope1,2,3の基本的な考え方・算定方法について理解します。」と説明しています(GX検定ベーシック)。ベーシックの試験形式には計算問題の記載はありませんが、「どの排出がどこに入るか」を判断させる問題 には備えておく必要があります。


体験記で見えた「第5章」の明暗

第5章に関する体験記の記述は、次の3つが目立ちました。

1. Scope1・2・3 の区別で迷って不合格になった例がある

体験談サイトに載った30代男性の投稿(資格講座のリアル体験談)は、2024年11月の1回目で不合格になり、3か月後の次の回で合格した記録です。本人は1回目の敗因として、講座の動画をくり返し見て「理解できているつもりになっていました。」と書き、「実際に問題を解く練習が不足していました。」と振り返っています。似た選択肢の違いを判断できず、Scope1・2・3 の区別で迷ったことも挙げていました。

2. 時間がない人が、最後に Scope の違いだけは押さえている

2026年8月に70点ちょうどで合格した eumoru さんは、時間がとれず第1章・第2章を重点的に勉強し、あとは Scope1・2・3 の違いを理解して本番に臨みました。結果はギリギリの合格で、「やはり全範囲を勉強するのが大事だと思う。」とまとめています。範囲を絞るにしても、Scope の区別は外せない論点だということがわかります。

3. 企業の取組は得点源にしやすいが、業務経験だけでは足りない

2026年8月の投稿で82点を報告した ゼロから学ぶLCA さんの分野別の正答率は、企業の取組が90%でした。LCA・GHGプロトコル・Scope1〜3・CFP を少し勉強していたうえで、Scope の混同を意識して問題を解いています。

一方で、会社で電気・ガスの使用量から CO2 排出量を計算し、国に報告する担当の Arichi さんは、ベーシック・アドバンストとも70点台前半で、「大変難しかったですが、」と書いています。実務で排出量を扱っていても、試験は範囲全体から出るので油断はできません。


Scope1・2・3 を一枚で整理する

まずは全体像です。環境省は、事業者自らの排出だけでなく、原材料の調達・製造・物流・販売・廃棄まで、事業活動に関係するあらゆる排出を合計したものを サプライチェーン排出量 と呼び、Scope1・Scope2・Scope3 の排出量の合計で表しています(環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム)。

  • Scope1(直接排出): 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出。燃料の燃焼や工業プロセスが該当し、環境省は例として自社での化石燃料の燃焼、セメントの製造、フロンガスの漏洩を挙げています
  • Scope2(エネルギー起源の間接排出): 他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  • Scope3(その他の間接排出): Scope1・2以外の間接排出で、事業者の活動に関連する他社の排出

(環境省「Scope1、2排出量とは」)

この枠組みを定めているのが GHGプロトコル です。世界資源研究所(WRI)と持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)が1990年代後半に立ち上げた国際的なイニシアティブで、企業の排出量の算定・報告の基準(コーポレート基準)や、バリューチェーン全体を扱う Scope3 基準を作っています(GHG Protocol About Us)。

試験で狙われやすい3つの境目

区別で迷いやすいのは、次の3点です。

  • 買った電気はScope2: 電力会社から購入した電気の使用に伴う排出は Scope2 です。Scope3 ではありません。ただし、その電気をつくる燃料の採掘・精製など「上流工程」の排出は、Scope3 のカテゴリ3に入ります
  • 自社の燃料はScope1、他社のトラックはScope3: 自社の車両や設備で燃料を燃やせば Scope1、外部に委託した輸送はカテゴリ4・9、従業員の出張や通勤はカテゴリ6・7です
  • 売った製品を使うときの排出はScope3: 自社が販売した家電や自動車が使われるときの排出は、カテゴリ11「販売した製品の使用」です

Scope2 には、算定の考え方として ロケーション基準とマーケット基準 の違いがあり、GHGプロトコルの「Scope2ガイダンス」に示されています(環境省「Scope1、2排出量とは」)。シラバスが Scope2 と並べて「電力の排出係数」を挙げているのも、購入する電気の排出係数によって Scope2 の数字が変わりうるからだと考えられます。

また、環境省は Scope1・2 について、国内の事業者単独で見れば温対法の SHK制度(温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度)と「概ね同様の算定範囲」と説明しています。第4章の温対法・SHK制度とつながる論点です。


Scope3 の15カテゴリを「上流8つ・下流7つ」で覚える

Scope3 の15カテゴリの名前は、環境省の表記では次のとおりです(環境省「Scope3排出量とは」)。GHGプロトコルの Scope3 基準では、カテゴリ1〜8を上流、9〜15を下流 に分けています(GHG Protocol Scope 3 Standard)。

上流(買う側・つくる前): カテゴリ1〜8

  • 1 購入した製品・サービス(原材料の調達、パッケージングの外部委託、消耗品の調達)
  • 2 資本財(生産設備の増設など)
  • 3 Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動(調達している燃料や電力の上流工程)
  • 4 輸送、配送(上流)(調達物流、横持物流、自社が荷主の出荷物流)
  • 5 事業から出る廃棄物(廃棄物の自社以外での輸送・処理)
  • 6 出張
  • 7 雇用者の通勤
  • 8 リース資産(上流)(自社が借りているリース資産の稼働)

下流(売る側・売った後): カテゴリ9〜15

  • 9 輸送、配送(下流)(自社が荷主の輸送以降の出荷輸送、倉庫での保管、小売店での販売)
  • 10 販売した製品の加工(事業者による中間製品の加工)
  • 11 販売した製品の使用(使用者による製品の使用)
  • 12 販売した製品の廃棄(使用者による製品の廃棄時の処理)
  • 13 リース資産(下流)(自社が貸しているリース資産の稼働)
  • 14 フランチャイズ(加盟者の Scope1・2 に当たる活動)
  • 15 投資(株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなど)

覚え方のコツは、「自社を真ん中に置いて、左から右へ流れる」 イメージで並べることです。上流は「買う(1・2・3)→ 運んでもらう(4)→ 捨てる(5)→ 人が動く(6・7)→ 借りる(8)」、下流は「運ぶ(9)→ 加工される(10)→ 使われる(11)→ 捨てられる(12)→ 貸す(13)→ 加盟店(14)→ お金(15)」。輸送とリース資産だけが上流・下流の両方にある、という点も問われやすいところです。

環境省の算定の流れでは、サプライチェーンの各活動を「漏れなくカテゴリ1~15に分類」したうえで、活動量と排出原単位から排出量を算定 します(環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム)。ベーシックは計算問題の記載がありませんが、「排出量=活動量×排出原単位」という考え方は押さえておきましょう。

削減貢献量は Scope1〜3 とは別の考え方

混同しやすいのが 削減貢献量 です。環境省の資料では、従来の製品・サービスを自社の製品・サービスで置き換えることで生まれる、サプライチェーン上の「削減量」を定量化する考え方と説明されています。例として、省エネ性能を高めた家電や、移動を減らすテレビ会議システムが挙がっています(環境省 削減貢献量について(PDF))。自社の Scope1〜3 を減らした量ではなく、他者の排出削減への貢献 をアピールするための別枠の数字だと理解しておけば、選択肢で迷いにくくなります。


TCFD提言の4つの開示項目

TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)は、気候変動が企業の財務に与える影響を投資家向けに開示する方法を示しました。その柱が 「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」 の4つの開示項目です。

  • ガバナンス: 気候関連のリスクと機会に対する取締役会の監督体制、経営者の役割。環境省の資料は、4項目のうち最上位に位置するのがガバナンスだと整理しています
  • 戦略: 短期・中期・長期のリスクと機会、事業・戦略・財務への影響、2℃目標などの様々な気候シナリオを考慮した戦略の強靭性(シナリオ分析)
  • リスク管理: リスクを識別・評価・管理するプロセスと、組織全体のリスク管理への統合状況
  • 指標と目標: リスクと機会の評価・管理に使う指標と目標。温室効果ガス排出量(スコープ1、2、3)がここに入ります

(環境省 TCFDの概要資料(PDF))

同じ資料では、気候関連リスクを 移行リスク(政策・法規制、技術、市場、評判)と 物理的リスク(急性・慢性)に分けて示しています。「洪水や台風による被害は物理的リスク」「炭素税の導入は移行リスク」のように、例から分類させる問題に備えておくとよいでしょう。

なお、TCFDは役目を終えて 2023年10月に解散 し、企業の気候関連開示の進捗モニタリングは IFRS財団が引き継ぎました(IFRS「ISSB and TCFD」)。TCFDの4つの柱は、ISSBの気候関連の開示基準(IFRS S2)に取り込まれています。「TCFDはもう無いから出ない」ではなく、ISSB・SSBJ の土台として今も問われる と考えるのが安全です。


SSBJ基準の義務化タイムライン

日本では、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)の基準が2025年3月5日に公表されました。2026年2月20日に開示府令の改正が公布・施行され、東証プライム上場企業のうち、平均時価総額3兆円以上は2027年3月期から、1兆円以上3兆円未満は2028年3月期から SSBJ基準による開示が義務になります。Scope3 については、初年度と翌年度に、後から訂正報告書で開示できる経過措置が設けられています(PwC Viewpoint 2026-02-25)。

シラバスは「SSBJ基準に沿った開示に向けたタイムライン」を明記していますが、シラバスの最終更新は2025年4月30日で、2026年2月の府令改正より前です。それより前に作られた教材や対策記事には反映されていない可能性があるため、確定した日付で覚え直しておく ことをおすすめします。


LCA・CFP と、PPAによる再エネ調達

LCA と CFP

LCA(ライフサイクルアセスメント) は、環境省のガイドラインの言葉では「製品やサービスのライフサイクルを通じた環境への影響を評価する手法」で、ISO14040 で規格化されています(環境省 LCAガイドライン 基本編(PDF))。そのうち温室効果ガスに絞ったものが CFP(カーボンフットプリント) で、環境省は「製品・サービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通した温室効果ガス排出量を、CO2排出量として換算した値」と説明しています(環境省 カーボンフットプリント全般)。同じページでは、算定の指針となる「カーボンフットプリント ガイドライン」も公開されています。

ここでの区別のポイントは、Scope1・2・3 は「会社単位」、CFP は「製品単位」 だということです。「企業のサプライチェーン排出量」と「製品1個あたりの排出量」を取り違えさせる選択肢に注意しましょう。

PPA(電力購入契約)の種類

再エネ電力の調達方法としてシラバスが挙げるのが PPA です。環境省の資料では、次の2つが基本の形として説明されています。

「敷地の中か外か」「電力系統を通すかどうか」が区別の軸です。オンサイトPPAの資料では、自社で設備を持つ「自己所有」やリースとの違いも整理されています。


自作の確認問題(1問)

公式の過去問は公開されていないため、ここでは第5章の内容から 自作 した問題を1問だけ置いておきます(本番の出題とは関係ありません)。

問題: Scope1・2・3 の分類として、最も不適切なものを1つ選べ。

  1. 自社工場のボイラーで重油を燃やしたことによる排出は、Scope1 に当たる
  2. 電力会社から購入した電気を自社オフィスで使ったことによる排出は、Scope2 に当たる
  3. 自社が販売した自動車を、購入者が運転したことによる排出は、Scope3 のカテゴリ11に当たる
  4. 自社の従業員が出張で飛行機を使ったことによる排出は、Scope2 に当たる

正解は 4。従業員の出張は Scope3 のカテゴリ6「出張」です。Scope2 は、他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う排出に限られます。

Scope の区別は、1問解いただけでは身につきません。「どの排出がどこに入るか」を判断する問題を数多く解き、正解の理由だけでなく、ほかの選択肢がなぜ違うかまで確かめるのが確実です。私たちのアプリでは、解説に出てくる「サプライチェーン排出量」「PPA」などの用語はタップすると専用の用語辞書で確かめられます。解説を読んでも腑に落ちない問題は、その問題をそのままAIに質問できます。定義の多い章でも、本を別に開かずに、解説と用語辞書で理解まで進められるということです。通勤などのスキマ時間に、区別があいまいな問題だけを繰り返すのにも向いています。


まとめ:第5章は「区別」と「最新の日付」で点が取れる

  • Scope1=自社の直接排出、Scope2=買った電気・熱・蒸気、Scope3=それ以外の他社の排出
  • Scope3 の15カテゴリは 上流1〜8・下流9〜15。輸送とリース資産は上流・下流の両方にある
  • 削減貢献量は Scope1〜3 の削減とは 別枠
  • TCFDの4項目は ガバナンス・戦略・リスク管理・指標と目標。TCFDは2023年10月に解散し、ISSB・SSBJ に引き継がれた
  • SSBJ基準の義務化は 3兆円以上が2027年3月期、1兆円以上が2028年3月期
  • CFP は 製品単位、PPA は オンサイトかオフサイトか で区別する

体験記を読む限り、第5章は定義を押さえれば得点源にできる一方、Scope の区別があいまいなままだと、似た選択肢を外せずに失点しやすい章です。解説を読んで「わかったつもり」にならず、問題で区別を確かめておきましょう。

2026年第4回の受験期間は 11月11日(水)〜25日(水)、個人の申込締切は 10月28日(水)12:00 です(開催スケジュール)。

次回の第8回では、第6章「脱炭素技術とイノベーション」を扱います。再エネ・蓄電池・水素・アンモニア・カーボンリサイクル・DACCS など、似た略語の多い技術分野の覚え方を整理します。


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※この記事は2026-09-26時点の公開情報をもとにしています。試験の制度・日程・出題範囲や、SSBJ基準などの制度は変わることがあるので、受験前に必ずGX検定公式サイトとシラバス・例題ページで確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。Scope3 のカテゴリ名は環境省の表記に、上流・下流の区分は GHGプロトコル Scope3 基準によっています。

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