証券アナリスト1次 科目Ⅱ対策:財務分析とファイナンス

証券アナリスト1次 攻略シリーズの第6回です。この連載は、第1回で合格・不合格の体験記25人分を読み込み、日本証券アナリスト協会(以下、協会)の公式情報と突き合わせて書いています。
今回と次回は科目ごとの対策です。前回の科目Ⅰに続き、今回は 科目Ⅱ「財務分析・コーポレート・ファイナンス」 を取り上げます。
科目Ⅱは、3科目のなかで「いちばん易しい」と言われることが多い科目です。協会の合格者アンケートでも、最も易しかった科目に科目Ⅱを選んだ人が62.3%いました(協会「合格者の声」、2022年秋の全科目合格者388人)。
ところが体験記を読むと、そう単純ではありません。経済学部の学生として3科目に合格した人は科目Ⅱが一番大変だったと書き(國富(こくふ)さん)、地方の金融機関に勤める合格者は当日の3科目を振り返って、「得点源のはずなのになぜか解けない財務分析」と書いています(かわいそうなzoo)。
易しいと感じる人と、苦労する人の差はどこにあるのか。答えの多くは 簿記の土台があるかどうか と、過去問の回し方 にありました。
私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っています。科目Ⅱの差が簿記の土台から生まれるなら、つまずくのは会計の用語です。そのため、3科目・計1,500問の解説に出てくる用語は、タップすると証券アナリスト1次専用の用語辞書が開くようにしています。
科目Ⅱの基本:100分・100点、財務分析とファイナンスは概ね3:1
まず、試験のなかでの科目Ⅱの位置を押さえます。
- 時間と配点: 100分・100点。証券アナリスト1次は3科目とも試験時間の分数がそのまま配点で、科目Ⅰ 170点、科目Ⅱ 100点、科目Ⅲ 90点です(CBTソリューションズ 試験概要)。
- 中身の割合: 学習分野の「財務分析」と「コーポレート・ファイナンス」の配点割合は 概ね3:1(協会 スタディ・ガイド 2026年度版)。問題数や配点の細かい内訳は公表されていません。
- 試験の順番: 同じ日に科目Ⅰ→Ⅱ→Ⅲの順で行われます。9/27に実施された2026年秋試験(CBT方式の初回)では、国内の科目Ⅱは13:45〜15:25でした。午前の科目Ⅰ(170分)を終えて昼休みをはさんだあとの科目です。
- 出題範囲: 原則として前年度の講座テキストから出ます。出題はすべて、正解が1つの選択式です。

講座テキストは、財務分析が5冊、コーポレート・ファイナンスが2冊です。配本は財務分析が6月・7月・9月、コーポレート・ファイナンスは2冊とも11月です(協会 学習教材)。配点の4分の3を占める財務分析が先に届き、ファイナンスは最後に届く という順番は、学習計画を立てるときに意識しておきたい点です。
合格率は3科目でいちばん高いが、毎回ではない
2026年春の科目別の合格率は、科目Ⅰ 43.1%、科目Ⅱ 50.7%、科目Ⅲ 39.2%でした(協会 第1次試験データ)。3科目合計が44.6%と、2019年以降で最も低くなった回でも、科目Ⅱだけは5割を超えています。
現行のプログラムになった2022年春以降の科目Ⅱの合格率は、次のとおりです。
- 2022年: 春50.8%/秋48.6%
- 2023年: 春45.3%/秋55.0%
- 2024年: 春43.8%/秋50.9%
- 2025年: 春49.5%/秋54.4%
- 2026年: 春50.7%
43.8%から55.0%までの幅で動いており、2022年春・秋、2023年春、2024年春の4回は科目Ⅰより低い回でした。合格は相対評価(上位一定割合の受験者の平均点を基準に決める)なので、「易しい科目」は「みんなが点を取る科目」でもあります。手を抜けば、むしろ差をつけられます。
体験記を見ても、科目Ⅱで不合格になったと書いた人はいませんでした。2025年春に3科目同時に合格した みずきゆう さんの手応えは、科目Ⅰ・Ⅱが7〜8割、科目Ⅲが6割前後です(楽天アフィリエイトのリンクを含む記事)。
財務分析(約4分の3)で問われること
協会の「主要学習事項と学習ポイント」から、第1次レベルの財務分析の主な項目を抜き出すと、次のようになります(協会 学習ポイント 2026年度)。
- 財務諸表の相互関係、キャッシュ・フロー計算書(間接法)
- 収益認識、リース
- 固定資産・貸付金の減損(減損額の計算)
- 税効果会計の仕組み、のれんの償却と減損
- 連結の範囲と連結財務諸表の作成
- 日本基準とIFRSの相違(一部)
- デュポン・システムによる資本利益率(ROE)の分解、サステイナブル成長率
- キャッシュ・フロー計算書を使った安全性の分析
前半は「会計のルールを知っているか」、後半は「財務諸表から会社の収益力や安全性を読めるか」を問う項目です。計算問題として出やすいのは、ROEのデュポン分解、減損額、連結の数字などです。
分析指標は、名前と計算式を覚えるだけでは足りません。「この指標が上がったら、会社の何が良くなったと言えるのか」まで説明できるかが問われます。指標の定義と意味をセットで押さえておくと、選択肢の言い回しが変わっても迷いにくくなります。
コーポレート・ファイナンス(約4分の1)で問われること
コーポレート・ファイナンスの第1次レベルの主な項目は、次のとおりです(同じく学習ポイントから)。
- NPV(正味現在価値)・IRR(内部収益率)・回収期間法などの投資の意思決定
- WACC(加重平均資本コスト)と負債の節税効果
- CAPMなどによる株主資本コスト
- 財務レバレッジとROE
- DCF法による企業価値の評価
一方で、MM命題(資本構成・配当)、APV法、アンレバード/レバード・ベータ、EVA・MVA は第2次レベルの欄 に置かれています。1次の段階で深入りしなくてよい論点です。
この分野は、ほかの科目と重なっているのが特徴です。お金の時間価値やNPV・IRRは科目Ⅲの「数量分析と確率・統計」、CAPMは科目Ⅰのポートフォリオ理論にも出てきます。3科目をまとめて受ける人は、科目Ⅰ・Ⅲで学んだ道具を、科目Ⅱでは「会社の投資判断と価値評価」に使う と考えると、11月に届くテキスト2冊を短い期間で消化しやすくなります。
簿記の知識はどこまで効くか
科目Ⅱの話で必ず出てくるのが、簿記との関係です。体験記には、簿記の経験がある人が何人も登場します。
- 簿記1級: 高卒・働きながら3科目に一発合格した ぶんぶん さんは、簿記1級が科目Ⅱに直結し、過去問・模試での正答率は最初から約89%で、仕上がりは90%前後だったと書いています(本番の点数ではありません。自作講座などへの送客がある記事)。簿記1級を持つ人は科目Ⅱを軽くして、科目Ⅰ・Ⅲに時間を回すのが効率的、というのが本人の見立てです。
- 簿記2級: 化学系の大学生として全科目に合格した 旅する佃煮 さんは、科目Ⅱは6割くらいが簿記と関係していて、すらすら進んだと振り返っています。科目Ⅱの100分の試験を40分ほどで終え、2周見直したそうです。
- 会計士試験の学習歴: 会計士試験の勉強をしていた人が、科目Ⅱに約50時間で合格した例もあります(30start-assetbuilding)。
協会のアンケートでも、受講を始めた時点で財務分析を「テキストレベル」で知っていた人は29.1%で、6つの学習分野のなかで最も多くなっています(協会「合格者の声」)。科目Ⅱが「易しい」と言われる理由の一つは、ここにありそうです。
では、簿記を知っていれば科目Ⅱは準備なしで取れるのか。範囲を突き合わせると、答えは「半分はイエス、半分はノー」です。

- そのまま効くところ: 連結会計・税効果会計・リース取引・減損は、日商簿記2級の出題範囲と重なります。
- 土台の上に積むところ: デュポン分解、サステイナブル成長率、キャッシュ・フロー計算書による安全性分析、日本基準とIFRSの違いは、簿記の「財務諸表を作る」勉強では出てきにくい部分です。証券アナリストの試験は、作られた財務諸表を 読んで分析する 側に立ちます。
- ほぼ効かないところ: 配点の約4分の1を占めるコーポレート・ファイナンス(NPV・WACC・DCF法など)は、簿記の範囲の外です。
簿記2級を持っていた旅する佃煮さんも、1回目は、簿記2級と大学受験の確率の知識があるから参考書だけで受かると考えて講座テキストを使わず、科目Ⅲで不合格になっています。その後「付け焼き刃の知識では無理だと悟り」、勉強をやり直して全科目に合格しました。簿記の貯金があっても、上乗せ部分とファイナンスは別に勉強が要る と考えておくのが安全です。
簿記がない人はどう攻めたか
簿記の土台がなくても、科目Ⅱに合格した人はいます。
新卒で都市銀行に入り約8年融資を担当し、いまは事業会社の経理・財務部門にいる 経理・財務マンになりたくて さんは、科目Ⅱを最初に1科目だけ受けて合格しました。科目Ⅰは計算が複雑、科目Ⅲは統計になじみがない、科目Ⅱなら財務諸表で解けそう、という消去法で選んだそうです。
勉強法は徹底していて、方針は「テキストで勉強しない、ひたすら過去問」。市販の科目Ⅱの過去問題集を使い、「結果的に過去問は4周しました。」と書いています。流れは次のとおりです。
- 1周目は解説を読み、計算は解説どおりに自分の手を動かす
- 分からないところは YouTube の解説動画で補う
- 4周目でも解けない暗記項目を、問題集の白紙ページに「暗記メモ」としてまとめる
- 試験当日は、その暗記メモを直前まで見る
期間は3月1日からの2か月で、平日は朝2時間・夜2時間でした。

金融機関でも会計の部署でもない事業会社に勤める おにおん さんは、科目Ⅱ・Ⅲを先に受けて約150時間で合格し、半年後に科目Ⅰに合格しています(有料記事への送客がある記事)。
冒頭で紹介した國富(こくふ)さんは経済学部の学生で、科目Ⅲは軽く済んだ一方、科目Ⅱは暗記で乗り切るしかない問題が最も多かったと振り返っています。会計のルールは、理屈より先に「決まりとして覚える」量が多い。簿記を勉強したことがない人がつまずくのは、ここです。
体験記と公式情報から組み立てる、科目Ⅱの進め方
ここまでの話を、勉強の進め方にまとめます。
1. 過去問を主役にする。ただし現行プログラムの回を中心に
体験記で最も多かった合格の型は、過去問を主役にして何周も回すやり方でした。科目Ⅱは出題の形が似ているので、この型が特に効きます。
協会の「CMA e-Learning」には2017年〜2025年春の試験問題が入っていますが、2021年以前は改定前のプログラム(旧科目「財務分析」)の出題 です(協会 スタディ・ガイド)。現行の範囲で作られた問題は2022年春〜2025年春の7回分なので、まずはここを優先します。
2. 過去問にない論点は、別の問題で埋める
試験は原則として前年度の講座テキストの範囲から出ます。みずきゆうさんは、過去問で最近の問題が解けなかったと書いています。過去問を覚えるほど回しても、過去問に出ていない論点は残る ということです。
そこで、過去問とは別の問題で範囲の穴を探します。冒頭で触れた私たちのアプリでは、全問に正解の理由と各選択肢の正誤の解説があり、解説に出てくる会計の用語はタップすると証券アナリスト1次専用の用語辞書が開きます。それでも引っかかる問題は、そのまま AI に質問できます。解説と用語辞書で理解まで進められるので、参考書を別に用意しなくても、問題を解きながら範囲を埋めていけます。
3. 簿記がある人は「上乗せ」とファイナンスに時間を回す
簿記の範囲と重なる連結・税効果・減損は、過去問で確認する程度にとどめ、デュポン分解やキャッシュ・フローの分析、コーポレート・ファイナンスに時間を回します。浮いた時間は、配点の大きい科目Ⅰや、合格率の低い科目Ⅲに使えます。
4. 簿記がない人は「暗記メモ」を作る
会計のルールは、覚える量で差がつきます。過去問を回すなかで、何度も間違える論点を1か所にまとめておき、直前に見返す。経理・財務マンになりたくてさんのやり方は、そのまま真似できます。
アプリで解いているなら、「間違えた問題だけ」の絞り込みがそのまま暗記メモの役目を果たします。忘却曲線で復習の問題も自動で出てくるので、何をいつ見直すかを自分で管理する手間が減ります。通勤や昼休みの10分でも回せるので、平日にまとまった時間が取りにくい人にも向いています。
5. 当日は計算問題から、見直しは慎重に
2025年秋に3科目を同時に受けた 揚塩ころも さんは、科目Ⅱを計算問題から解きました。一方で、見直しで直した答えより、最初の答えのほうが正しかったという失敗も書いています。科目Ⅱは旅する佃煮さんのように時間が余る人もいる科目ですが、根拠なく答えを変えない ことも大事です。
NPV・IRR・DCF法などの計算には電卓を使います。関数電卓・金融電卓はどちらも持ち込めます。CBT方式は1台までで、画面上の電卓を2台目として使えます。PBT方式は2台までです(CBTソリューションズ 試験概要)。
まとめ:科目Ⅱは「落とさない科目」にする
- 科目Ⅱは 100分・100点。財務分析:コーポレート・ファイナンス=概ね3:1
- 合格率は2026年春で 50.7% と3科目で最も高いが、相対評価なので「みんなが取る科目」でもある
- 簿記の知識は 連結・税効果・リース・減損 にはそのまま効く。分析の手法とコーポレート・ファイナンス は別に勉強が要る
- 勉強の中心は 現行プログラム(2022年春以降)の過去問の周回。過去問にない論点は、解説つきの別の問題で埋める
- ファイナンスは 科目Ⅰ・Ⅲと道具が共通。3科目まとめて受けるなら、つなげて覚える
9/27に実施された2026年秋試験の結果は、11月中旬に発表されます。これから始める人は、2026年度講座(申込は2027年1月31日まで)を受講すると、2027年春から受験できます。2027年の試験日程は、まだ発表されていません(例年10月末ごろ掲載)。
次回の第7回は、体験記で落ちた科目がわかる人が全員つまずいた 科目Ⅲ(経済・数量分析・職業倫理) を取り上げます。職業倫理の足切りと、落ちた人がどう立て直したかを見ていきます。
証券アナリスト1次の3科目・計1,500問をアプリで解くなら「ナレッジバンドル」

資格対策アプリ「ナレッジバンドル」には、証券アナリスト1次のオリジナル問題3科目・計1,500問がすべて入っています。スキマ時間に1問ずつ解いて、間違えた問題だけを繰り返せます。
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※この記事は2026年9月26日時点の公開情報をもとにしています。試験の制度・日程・受験料は変わることがあるので、受験前に必ず日本証券アナリスト協会の公式サイトで確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。