証券アナリスト1次試験の仕組みを総ざらい

連載「証券アナリスト1次 攻略シリーズ」の第2回です。第1回では、2023年以降に書かれた合格・不合格の体験記25人分を読み込み、「受かる人」と「科目Ⅲで落ちる人」の違いを整理しました。
体験記を読んでいて気づくのは、試験の仕組みを知らないまま始めて遠回りした人が少なくない ことです。講座を申し込まないと受験できない、受講した年度の試験は受けられない、合格点が決まっていない、科目Ⅲには職業倫理の足切りがある――どれも公式ページには書いてあるのに、勉強法の記事ではあまり触れられません。
しかも、2026年9月27日(日)の秋試験から、国内の大半の会場が CBT(テストセンターのパソコンで受ける方式) に切り替わりました。第2回の今回は、日本証券アナリスト協会(以下、協会)と、試験の運営を委託されている CBTソリューションズ社の公式情報をもとに、1次試験の仕組みを最初から最後まで まとめます。
私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていて、証券アナリスト1次の3科目・計1,500問を用意するときも、ここで取り上げる仕組みを前提にしました。たとえば科目Ⅲには職業倫理の足切りがあるので、本番形式のテストでは合格率とあわせて弱点のカテゴリをグラフで確かめられるようにしています。
全体像:講座 → 1次試験 → 2次試験 → CMA
証券アナリスト(CMA、日本証券アナリスト協会認定アナリスト)になるまでの道のりは、次の順番です(協会 資格・教育体系)。
- 第1次レベル講座を受講する(誰でも申し込める)
- 第1次試験の3科目に合格する
- 第2次レベル講座を受講する(受講料66,000円)
- 第2次試験に合格する(記述式中心・360分)
- 実務経験3年以上で協会に検定会員として入会し、CMA を名乗れる
協会のFAQによると、第2次試験の合格までは最短でも2年かかります(協会 よくあるご質問)。この連載が扱うのは、1と2の部分です。2次試験や CMA 取得については第10回で触れます。
講座を受けないと、受験できない
証券アナリスト1次試験の最大の特徴は、試験だけを申し込むことができない ことです。協会の試験ページには、受験資格として「講座を受講せずに受験することはできません」と明記されています(協会 試験の内容・実施・合否)。
理由について、協会はFAQで、この制度は試験や称号だけを目的にしているのではなく教育・学習の過程を重視しているため、「講座の受講が受験の要件となります」と説明しています(協会 よくあるご質問)。
講座そのものは、年齢や学歴の制限がなく、どなたでも受講できます。いま申し込めるのは 2026年度の第1次レベル講座 です(協会 第1次レベル講座)。
- 申込期間: 2026年5月20日〜2027年1月31日
- 受講料(税込): 一般 69,000円/会員(法人会員などの役職員)63,000円。2025年度講座から各3,000円の値上げ
- 教材: 講座テキスト全19冊(冊子とPDF)と「CMA e-Learning」。e-Learning には2017年〜2025年春の1次試験の問題と練習問題が入っている
- 開講期間: 6月〜翌年1月の8か月。テキストは6月・7月・9月・11月の4回に分けて届く
- 動画の講義はない(テキストによる自習方式)
注意したいのは、e-Learning に入っている 2021年以前の問題は、プログラム改定前のテキストに基づく出題 だという点です(協会 スタディ・ガイド2026年度版)。いまのプログラムは2021年度講座から始まり、試験は2022年春からこの形です。古い問題は範囲がずれていることを知ったうえで使いましょう。
受講した年度の試験は受けられない
もう一つの落とし穴が、受験できるのは受講年度の翌年から という決まりです(協会 試験の内容・実施・合否)。2026年度講座を申し込んだ人が受けられるのは2027年〜2029年の試験で、2026年の試験は受けられません。

つまり、これから始めて2027年春の試験を受けたい人は、2027年1月31日までに2026年度講座を申し込む必要があります。年が明けてから「来年の春に受けよう」と思い立っても、1月末を過ぎると2027年の試験には間に合いません。2027年の試験日程はまだ発表されておらず、例年10月末ごろに協会のサイトに載ります。
受験可能期間は3年、科目合格も3年のあいだ残る
受験可能期間は受講年度の翌年から 原則3年間 です。試験は春と秋の年2回あります。合格した科目は、この3年のあいだ残ります。
3年で3科目がそろわなかった場合は、講座を 再受講 すれば、合格した科目は失効せず、未合格の科目がさらに3年受けられます。再受講は合格科目があっても全分野の一括受講で、受講料は新規と同じです。再受講しなければ、それまでの合格実績はすべて失効します(協会 再受講制度)。
体験記の中にも、仕事の忙しさと妊娠中の体調不良で「全3科目が取りきれずに期日を終了していた」と書いた人がいます(はなちゃん)。この人は出産後に再受講して合格しました。3年期限と再受講の組み立て方は、第9回でくわしく扱います。
3科目の中身と配点:「1分=1点」
1次試験は3科目で、配点の合計が試験時間(分)と同じ という珍しい作りになっています。

- 科目Ⅰ 証券分析とポートフォリオ・マネジメント: 170分・170点。株式分析、債券分析、デリバティブ分析、ポートフォリオ・マネジメントなど
- 科目Ⅱ 財務分析・コーポレート・ファイナンス: 100分・100点。財務分析とコーポレート・ファイナンスの配点割合は概ね3:1
- 科目Ⅲ 市場と経済の分析・数量分析と確率・統計・職業倫理・行為基準: 90分・90点。配点割合は概ね6:2:1
(出典: 協会 スタディ・ガイド2026年度版、CBTソリューションズ 試験概要)
各問題の冒頭には配点が表示され、その合計は試験時間と一致します。2025年春試験の実施要領では、この配点を「問題ごとの配点(=解答に要する時間の目安、1分=1点)」と説明していました(協会 2025年春試験 試験実施要領(保存版))。配点の数字が、その問題にかけてよい分数の目安 になるわけです。5点の問題に10分かけていたら、どこかで時間が足りなくなります。
問題の形式と出題範囲
- 形式: すべて正解が1つの客観問題。計算問題や穴埋め問題も、選択肢から選ぶ形です
- 問題数: 公式には公表されていません
- 出題範囲: 原則として 前年度の講座テキスト から出題され、範囲は第1次レベル講座のすべての学習ポイントです(CBTソリューションズ 試験概要、協会 第1次試験データ)
「前年度の講座テキストから出題」ということは、範囲が年度ごとに更新されるということです。古い過去問や古い問題集だけで準備すると、範囲がずれることがあります。2025年春に3科目合格した みずきゆう さん(記事内に楽天アフィリエイトのリンクあり)も、過去問を解くと「最近の問題があまり解けないのです。」と書いていました。
演習に使う問題は、いまの3科目の範囲に合わせたものを選ぶのが前提です。私たちのアプリでは、3科目・計1,500問のオリジナル問題をスマホで1問ずつ解けて、全問に正解の理由と各選択肢の正誤の解説がつき、解説の用語はタップで用語辞書が開きます。読むための本を別に広げなくても、問題を解きながら理解まで進められる作りです。演習に使う問題の選び方は、第4回で整理します。
3科目を同じ1日に、科目ごとにも受けられる
3科目は同じ日に続けて行われます。2026年秋試験の国内 CBT の時間割は、科目Ⅰが9:30〜12:20、科目Ⅱが13:45〜15:25、科目Ⅲが16:15〜17:45です(CBTソリューションズ 試験概要)。
講座は6分野をまとめて受けますが、試験は科目ごとに申し込めます。1回で3科目を受ける人もいれば、春と秋に分けて受ける人もいます。体験記25人では、1回目に3科目同時が15人、分割が5人でした。どちらが向いているかは第8回で比べます。
合格基準は相対評価、得点は開示されない
「何点取れば合格か」は、公式には決まっていません。協会の試験ページには「試験の合否は、上位一定割合の受験者の平均得点を基準に決定されます。」とあります(協会 試験の内容・実施・合否)。FAQでも、何点以上なら合格という絶対的な基準ではない、と説明されています。
さらに、次の点も押さえておきましょう。
- 得点と順位は、合否にかかわらず開示されない
- 不合格者にだけ、不合格者の中での 順位ランク が出る。A(上位1/10まで)、B(A以外で上位1/4まで)、C(A・B以外で1/2以内)、D(1/2未満)
- 協会は「出題および採点の方針等は一切公表いたしません。」としている
- 合否は、春試験が6月中旬ごろ、秋試験が11月中旬ごろに、協会のマイページで確認する(郵送はない)
体験記に出てくる「不合格C」は、この順位ランクのことです。旅する佃煮 さんは科目Ⅲで「本番の秋試験、不合格C。」と書いています(前後の文脈からは春試験の結果と読めます)。この人はその後、学び直して全科目に合格しました。
また、マークシート時代の体験記では、問題は回収され、解答の公表も結果発表の後なので自己採点ができなかった、という声がありました。手応えだけで次の手を決めなければならないのも、この試験の特徴です。
合格率は協会が科目ごとに公表しています。3科目の延べで見ると、2025年秋は52.7%、2026年春は 44.6% で、2019年以降でもっとも低くなりました。2026年春の科目別は、科目Ⅰ 43.1%、科目Ⅱ 50.7%、科目Ⅲ 39.2% です(協会 第1次試験データ)。受験者数も延べで、実際に何人が受けたかは公表されていません。
科目Ⅲにだけある「職業倫理の足切り」
科目Ⅲには、ほかの科目にないルールがあります。科目Ⅲの得点が合格最低点を上回っていても、「職業倫理・行為基準」の得点が一定水準に達していなければ、科目Ⅲは不合格 になります(協会 試験の内容・実施・合否)。
- 足切りで落ちた場合、順位ランクは「A(R)」と表示される
- 「一定水準」が何点なのかは公表されていない
- 科目Ⅲの試験では、「証券アナリスト職業行為基準」の本文は問題に表示されない(CBTソリューションズ 試験概要)
職業倫理は科目Ⅲの配点割合で「1」にあたり、90点のうち計算上はおおよそ10点分です。配点は小さいのに、ここを落とすと科目Ⅲ全体が不合格になります。
足切りで落ちた人数は、過去には2022年秋が16名、2023年秋が3名と公表されていました。2026年春は人数こそ公表されていませんが、協会は「現行のプログラムに基づく9回の中で最も多かった」と書いています(協会 第1次試験データ)。科目Ⅲの合格率が39.2%まで下がった回と重なっていることは、覚えておいて損はありません。
配点が小さい分野ほど、演習では後回しにされがちです。通して解いたときに職業倫理の正答が落ちていないかは、早めに確かめておきたいところです。冒頭で触れた私たちのアプリの本番形式テストでは、いまの合格率と弱点カテゴリがグラフで出るので、職業倫理が手薄になっていないかを見つけやすくなります。科目Ⅲの対策は第7回でまとめます。

2026年秋からCBTへ:変わったこと・変わらないこと
2026年秋試験から、1次試験に CBT方式 が導入されました。協会が2026年6月25日に正式に決め、国内47都道府県のテストセンターから会場を選べるようになりました(協会 CBT方式導入について)。2025年までの会場は国内9都市だったので、地方の人にとっては受けやすくなっています。
変わらないこと
- 3科目の構成と、各科目の試験時間
- 春・秋それぞれ1日で3科目を実施すること
- 正解が1つの選択式であること
- どちらの方式で受けても同じ資格になること
変わったこと
- 東京の一部と海外は PBT(従来のマークシート)を当面続ける。CBT と PBT は同じ日・同じ問題で、1回の試験で申し込めるのはどちらか一方だけ
- 申込先が CBTソリューションズ社のマイページに。支払手数料がなくなり、クレジットカードでも払えるようになった
- 受験料は3科目14,800円(科目Ⅰ 7,400円、科目Ⅱ・Ⅲ 各3,700円)。2025年春は3科目14,000円に支払手数料200円だった
- CBT では受験票が出ない。私物の筆記用具は持ち込めず、会場でメモ用紙と筆記用具が貸し出される
- 電卓は CBT が1台まで(画面上の電卓と合わせて2台使える)、PBT は2台まで。関数電卓・金融電卓はどちらも持ち込める。公式を記憶・表示できるもの、通信機能や音が出るものは使えない
- CBT は開始から30分以内なら遅刻しても受けられる(終了時刻は延びない)。スマホや時計は試験室に持ち込めない
(出典: CBTソリューションズ 試験概要)
協会は、複数の試験日から選べる形を「2028年以降のできるだけ早い段階」で実現することを目指して検討するとしています(協会 2025年5月29日のお知らせ)。当面は、春と秋の年2回・1日実施のままです。
なお、この連載が読み込んだ体験記は すべてマークシート時代のもの です。9月27日の秋試験が CBT の初回で、CBT で受けた人の体験記はまだありません。電卓の使い方や当日の流れは、第8回で CBT のルールに合わせて整理します。
1次試験までにかかるお金と、年間の予定
最後に、お金と日程をまとめておきます。
- 最低限の費用の例: 2026年度講座を一般で受講し、2027年に3科目をまとめて受ける場合、受講料69,000円+受験料14,800円=83,800円(2027年の受験料が今と同じだった場合の計算。2027年の受験料はまだ発表されていません)
- 試験の時期: 春は4月下旬、秋は9月下旬(または10月上旬)が目安。2026年は春が4月26日、秋が9月27日です
- 申込の時期: 2026年は春試験が2月6日〜3月5日、秋試験の CBT が7月1日〜9月4日。受験料の入金後は、キャンセル・返金や科目の変更ができない
- 合否発表: 春は6月中旬ごろ、秋は11月中旬ごろ。9月27日に受けた人の結果は11月中旬の予定です
まとめ:仕組みを知ると、やるべきことが見える
証券アナリスト1次試験の仕組みを、ひと言ずつでまとめます。
- 講座必須: 受験は受講年度の翌年から。2027年春に受けるなら、2027年1月31日までに2026年度講座へ
- 1分=1点: 配点の数字が、その問題にかける時間の目安
- 前年度テキストから出題: 範囲は年度ごとに更新される。古い過去問・問題集だけでは範囲がずれることがある
- 相対評価: 合格点は決まっておらず、得点も出ない。不合格者には順位ランクだけ
- 職業倫理の足切り: 科目Ⅲの約10点分を落とすと、科目Ⅲ全体が不合格。2026年春は過去最多
- 3年の受験可能期間: 合格科目は3年残る。そろわなければ再受講
- CBT化: 2026年秋から国内47都道府県。問題・時間・科目の構成は同じで、電卓と当日のルールが変わった
次回の第3回は、「証券アナリスト1次の勉強時間は何時間か」を扱います。協会の合格者アンケートと体験記の実数から、1年・半年・分割受験のプランを逆算します。
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※この記事は2026-09-26時点の公開情報をもとにしています。試験の制度・日程・受験料は変わることがあるので、受験前に必ず日本証券アナリスト協会の公式サイトとCBTソリューションズの試験概要ページで確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。