エネルギー管理士 熱分野対策:課目Ⅱと燃焼計算

エネルギー管理士 攻略シリーズの第7回です。この連載は、第1回で2023年以降に公開された合格・不合格体験記41人分を読み込み、省エネルギーセンター(ECCJ)の公式情報と突き合わせて書いています。
今回は 熱分野 の専門3課目を扱います。熱分野を選んだ人にとっての山場は、はっきりしています。課目Ⅱ「熱と流体の流れの基礎」 です。体験記で、1課目だけ残って翌年に持ち越しになった熱分野の人を見ると、残った課目として最も多く名前が挙がるのがこの課目Ⅱでした。
あわせて、配点の半分近くを1問が占める 課目Ⅲの燃焼計算 と、4問から2問を選ぶ 課目Ⅳの選択問題 の決め方も整理します。
私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っています。課目Ⅱで苦労した人の体験記を読むと、解説のない過去問でわからない所を、生成AIに質問してつぶしていた人が目立ちました。アプリで、解いた問題をそのまま AI に質問できるようにしているのは、この「その場で聞く」を問題演習の中でできるようにするためです。
熱分野の4課目と配点を先に押さえる
熱分野は、共通の課目Ⅰに、熱の専門課目Ⅱ〜Ⅳを加えた4課目です。2026年度(第48回)の試験は8月2日の1日で、次の順に行われました(ECCJ 第48回 試験の内容)。
- 1時限 9:00〜10:20(80分): 課目Ⅰ エネルギー総合管理及び法規
- 2時限 10:50〜12:40(110分): 課目Ⅱ 熱と流体の流れの基礎
- 3時限 14:00〜15:50(110分): 課目Ⅳ 熱利用設備及びその管理
- 4時限 16:20〜17:40(80分): 課目Ⅲ 燃料と燃焼
課目の番号と時限の順番が違う 点に注意してください。課目Ⅲ(燃料と燃焼)は1日の最後、夕方4時過ぎに始まります。
配点は、令和8年度の標準解答に載っている大問ごとの点数を足すと次の図のとおりです(ECCJ 令和8年度 標準解答)。

合格基準は 各課目とも60%以上 です。課目Ⅱは200点中120点、課目Ⅲは110点中66点、課目Ⅳは280点中168点が合格ラインになります。1課目でも届かなければその年の試験合格にはなりませんが、60%以上取れた課目は、合格した試験が行われた年の初めから3年以内なら免除されます(課目合格の使い方は第9回でくわしく扱います)。
課目Ⅱが「最難関」と言われる理由
課目Ⅱは110分・200点で、熱力学が2問(100点)、流体工学が1問(50点)、伝熱工学が1問(50点) という構成です。受験対策の解説記事でも、熱分野の最難関課目としてよく挙げられます。
理由は、体験記を読むとよくわかります。熱力学は、状態変化やサイクルの式を自分で組み立てて計算する問題が中心で、暗記だけでは点が伸びません。2026年度の問題4はオットーサイクルの問題でした。運転員としてボイラーやタービンを扱い、4課目に一発合格した 或る運転員の業務日誌 さんでさえ、試験直後の記事でこう書いています。
「オットーサイクルの計算問題。ほぼノータッチだった」
熱分野で課目合格を持ち越した8人のうち、残った課目が課目Ⅱだと書いている人は4人 いました。

特に参考になるのが、浪人技師 さんの記録です。工業炉・熱プロセスの技術者ですが、熱力学の基礎は「ほぼゼロ」の状態から始めました。1年目は「課目Ⅱだけが合格基準の60%に届かなかった」(45%)。本人の分析は、基礎がない熱力学を他の課目と同じように過去問中心で進め、答えを覚えることと理解することを混同していた、というものです。
「勉強時間の配分を間違えたのである」
こじろう さんも、課目Ⅱだけ「あと4点」で届かなかった一人です。その年は「課目2だけちょっと問題傾向が変わった。」と感じ、過去問の答えを覚えるだけでは足りなかったと振り返っています。前編には、こんな一文があります。
「「ほぼ受かった」は、受かってない」
2026年に課目Ⅱ・Ⅲに合格して最終合格した gorokun1200 さんも、試験直後に「やはり熱力学はしっかり勉強しなくちゃダメだ」と書いています。
課目Ⅱを落とさない勉強法
1. 勉強時間の最大の配分を課目Ⅱに回す
合格者の多くは、4課目の中で課目Ⅱに最も時間を使っています。
- Waterfall さん(ボイラーを扱う仕事)は、課目Ⅱは4か月前、Ⅳは2か月前、Ⅰ・Ⅲは2週間前から着手した
- 設備管理.com の tange0310 さん(電験三種を持ち、あえて熱を選んだ)は、2か月のうち約1か月半を課目Ⅱ+Ⅳに使い、Ⅰ+Ⅲは最後の1週間に回した
- わったさん は、過去問8年分を2周し、課目Ⅱは必ず2周した
- たけのブログ(記事にアフィリエイトリンクあり)は、150〜200時間の内訳として熱力学30時間・流体15時間・伝熱15時間を挙げている
課目Ⅱの中でも、100点を占める熱力学に時間を厚くするのが基本線です。
2. 「答えを覚える」のではなく「式を自分で導く」
課目Ⅱで持ち越した人に共通する反省は、過去問の答えを覚えて理解したつもりになっていたことでした。
合格者側の工夫はその裏返しです。かぶまる さんは課目Ⅱについて「式を自分で導き出してみる」ことを勧めています。化学メーカーで働く 化学工学レビュワー さん(記事にアフィリエイトリンクあり)は、サイクルの図を描き、途中式を残して解いていました。安全工学を考える の筆者(同)は、単位(次元)から解法を思い出す方法を使っています。
1年目に45%だった浪人技師さんは、2年目は30時間で84%まで上げました。やり方は次の5段階です。
- 過去問で計算の型を確認する
- 解けない原因になっている基礎を特定する
- 学生時代の教科書や動画で、その部分だけ学び直す
- 過去問の解き方に落とし込む
- 条件を変えても同じように解けるか確かめる
5番目の確認が、こじろうさんの言う、形が変わっても解ける理解にあたります。
3. 解説のない過去問は、「解説のある問題演習」で補う
熱分野は、電気分野に比べて教材が少ないと感じる人がいます。電験三種のあと熱分野で取得した uno さんは「圧倒的に、テキストや解説動画がありません」と書いています。ECCJ が公開している過去の試験問題には解説が付いていないので、「なぜその式になるか」は別の手段で確かめることになります。
体験記で目立ったのは、本を読み込むより、問題を解きながら疑問をその場でつぶすやり方です。
- わからない所を ChatGPT に質問する(tange0310 さん。最初に過去問を見たときは「呪文か?」と感じたそうです。参考書は買わずに合格しています)
- 生成AIを壁打ち相手にし、特に伝熱で効果があった(こじろうさんの後編)
- 解けない原因の基礎を特定し、そこだけ学び直してから過去問に戻る(浪人技師さん)
生成AIの説明は間違うこともあるので、答えは必ず正答と照らし合わせます。
私たちのアプリでは、この「解く → 解説を読む → わからない言葉を調べる → 質問する」を1か所で回せます。全問に正解の理由と各選択肢の正誤が書かれていて、解説の用語をタップすると専用の用語辞書が開くので、熱力学の用語で止まったときも、その場で確かめられます。解説を読んでも引っかかった問題は、そのまま AI に質問できます。熱力学の本を別に1冊読み通さなくても、問題演習の中で理解まで進められる設計です。
課目Ⅱの本番:110分をどう使うか
200点を110分で解くので、1大問あたり約25分、残り10分を見直しに回すのが単純計算の目安です。
体験記で目立ったのが、解く順番を変えた 合格者です。トモテル さん(高校物理は未履修、課目Ⅱは自己採点164/200)は、あえて熱力学から解かず、次のように書いています。
「敢えて熱力学から解かず、流体力学問題から解きました」
流体→伝熱を先に片づけ、残り65分で熱力学の2問に取り組んだそうです。本人はこれを「今回の試験最大のファインプレー」と振り返っています。重い熱力学で時間を使い切り、流体・伝熱に手が回らなくなる事態を避けられるのが利点です。
ほかにも、次のような工夫がありました。
- 試験開始直後に、問題冊子の余白へ状態変化の公式の表を書き出す(tange0310 さん)。ECCJ の問題冊子は余白を計算用紙に使ってよいとしています
- 空欄は前の答えを使う連鎖型が多いものの、後半に独立した空欄が残っていることもある。前半でつまずいても最後まで目を通す
- 残り5分で解法を思い出して埋めた、という例もある(安全工学を考える)。解答はすべて解答群から選ぶ形式なので、空欄を残さない

課目Ⅲ:燃焼計算の50点は捨てない
課目Ⅲ「燃料と燃焼」は80分・110点で、燃料及び燃焼管理が2問(各30点)、燃焼計算が1問(50点) です。燃焼計算だけで課目の約45%を占めます。
図にも書いたとおり、合格ラインは66点なので、燃焼計算が0点だと残り60点をすべて取っても合格できません。燃焼計算を半分(25点)取れた場合でも、残りの60点中41点、約7割が必要になります。燃焼計算は捨てられない問題です。
体験記を見ても、課目Ⅲの明暗は燃焼計算への準備で分かれていました。
- 40代 リーマンたけしの日常雑談 の筆者は、1年目は課目Ⅲを「完全にノー勉強」で受けて自己採点63/110(57%)。「課目Ⅲ、あと1~2問正解して合格でした。」。翌年は燃焼計算を参考書の例題3つほどと過去問5年分で準備し、81点以上(自己採点)まで上げている
- 実質約2週間で合格した 潮 さんは、試験当日に途中退出した控え室で初めて課目Ⅲの過去問を開き、燃焼計算だけを3年分解いて臨んで、76/110(自己採点)だった
- トモテルさんは課目Ⅲを直近10年分3周している
燃焼計算の中身は、燃料の成分から 理論酸素量・理論空気量 を出し、空気比 を掛けて実際の空気量や 燃焼ガスの量・組成 を求める、という流れが基本です。考え方をつかむための例を1つ置いておきます。
自作の例題(過去問ではありません)
メタン(CH4)1 m3N を空気比1.2で完全燃焼させるときの空気量を求める。空気中の酸素は体積で21%とする。
- 反応式: CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O なので、理論酸素量は 2 m3N
- 理論空気量 = 2 ÷ 0.21 ≒ 9.52 m3N
- 実際の空気量 = 9.52 × 1.2 ≒ 11.4 m3N
本番の問題はこれより段階が多く、空欄が連鎖していきますが、反応式 → 酸素 → 空気 → 空気比 → 燃焼ガス の順番は変わりません。この流れを手で何度か書いておくと、過去問の解説が読みやすくなります。
解答群を使った逆算
2026年度は、或る運転員の業務日誌 さんが「今年の試験は計算結果を書かせる問題がなくなっていた」と書いているように、計算も解答群から選ぶ形式でした。選択肢の数値を当てはめて確かめる方法は、複数の合格者が使っています(業務日誌さんは課目Ⅲの問題10で、Waterfall さんも燃焼計算で「選択肢の式を代入して悪あがきした」)。ただし、これは最後の手段です。Waterfall さんは燃焼方式・排ガス分析の問題の対策不足も反省点に挙げています。
時間の目安は、配点から計算すると、燃料・燃焼管理の2問を合わせて25分ほどで終え、燃焼計算に40分以上を残す形です。課目Ⅲは1日の最後の80分なので、疲れた頭で初めて見る形の計算をするのは避けたいところです。
課目Ⅳ:選択問題は「どの2つか」を事前に決める
課目Ⅳ「熱利用設備及びその管理」は110分・280点と、配点がいちばん大きい課目です。内訳は次のとおりです。
- 必須: 計測及び制御 2問、ボイラ・蒸気輸送・蒸気原動機・内燃機関・ガスタービン等 2問(各50点)
- 選択(4問中2問): 熱交換器・熱回収装置/冷凍・空気調和設備/工業炉・熱設備材料/蒸留・蒸発・濃縮・乾燥・乾留・ガス化(各40点)
大問6問を110分で解くので、1問あたり17分ほど。時間はかなり厳しい課目です。
体験記で選ばれていた組み合わせは2通りでした。
- 熱交換器+冷凍・空調: トモテルさん、Waterfall さん(たけのブログもこの2つを推奨)
- 熱交換器+工業炉: 業務日誌さん、あげおBlog(記事にアフィリエイトリンクあり)
注意したいのは、冷凍・空調を選んだ2人がそろって苦戦していることです。トモテルさんは冷凍・空調が勉強不足で「40点中4点」、Waterfall さんも冷凍・空気調和設備は「ほとんど対策ができなかった」と書いています。選ぶなら、準備してから選ぶ必要があります。
選び方の考え方は次の2つです。
- 実務で触れている設備を選ぶ: 業務日誌さんのようにボイラー・タービンの現場にいる人、工業炉の仕事をしている人は、そのテーマから
- 課目Ⅱと重なるテーマを選ぶ: たけのブログは、熱交換器・熱回収装置は課目Ⅱの伝熱、冷凍・空気調和設備は課目Ⅱの熱力学と共通点があるので勉強時間が短く済む、と理由を書いている
潮さんは課目Ⅳの選択問題の存在を当日まで知らず、「え?科目IVって選択問題あるの?」と書いています。試験の構成は受験の手引で事前に確認し、選ぶ2テーマの過去問を重点的に回しておきましょう。受験の手引でも、選択問題は4問題中2問題を選んで解答する形と案内されています。当日は決めた2問に集中します。
数表と電卓:関数電卓は使えない
熱分野の計算で見落としやすいのが電卓の制限です。関数電卓・プログラム電卓・スマホの電卓は使用禁止 で、使えるのは四則演算・√・メモリーなどの機能に限った電卓1台です。貸し出しもありません(ECCJ 電卓の取扱い)。
そのかわり、課目Ⅱには指数・対数の計算に使う数表が問題に付いています(令和8年度 課目Ⅱ 問題)。断熱変化などで累乗や対数が出てきたら、数表を引いて計算します。練習の段階から本番と同じ普通の電卓を使い、数表を引く手順に慣れておきましょう。化学工学レビュワーさんも普通の電卓で練習し、本番では全問を電卓で検算したそうです。
また、受験の手引では、十分な有効桁数で計算した値に最も近い選択肢を正答とする、と説明されています。選択肢の数値は最大でも4桁程度なので、概算で選択肢を絞る力も時間短縮につながります。
まとめ:熱分野は課目Ⅱに時間を、課目Ⅲは燃焼計算を、課目Ⅳは選択を先に決める
- 熱分野で持ち越しが多いのは 課目Ⅱ。熱力学2問で100点を占める
- 課目Ⅱは 勉強時間の最大の配分 を回し、答えを覚えるのではなく 式を自分で導ける ようにする
- 本番は、熱力学で時間を使い切らないよう 流体・伝熱から先に 解く手もある
- 課目Ⅲは 燃焼計算50点を捨てない。0点だと残りが満点でも66点に届かない
- 課目Ⅳは 選ぶ2テーマを事前に決める。実務か、課目Ⅱと重なるテーマから
- 電卓は √とメモリーだけの普通の電卓。数表を引く練習もしておく
次回の試験は2027年8月1日(日)の予定です(申込期間はまだ発表されていません)。今から始めれば、課目Ⅱに十分な時間をかけられます。
連載の第8回は、電気分野の対策です。課目Ⅱ(電気の基礎)・課目Ⅲ(電気設備及び機器)・課目Ⅳ(電力応用)と、照明・電気加熱などの選択問題の選び方を扱います。
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※この記事は2026-09-26時点の公開情報をもとにしています。試験の制度・日程・出題構成は変わることがあるので、受験前に必ず省エネルギーセンターのエネルギー管理士試験のページで最新の受験の手引を確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。点数の多くは本人の自己採点です。過去問の問題文は転載しておらず、例題は筆者の自作です。