エネルギー管理士試験の仕組み:4課目・60%・3年ルール

連載「エネルギー管理士 攻略シリーズ」の第2回です。第1回では、2023年以降に公開された合格・不合格体験記41人分を読み込み、受かる人と落ちる人の違いを整理しました。
体験記を読んでいると、課目Ⅱだけ落として翌年に持ち越した、1問足りずに課目Ⅰだけ不合格だった、といった話が何度も出てきます。こうした話は、試験の仕組みを知らないと意味がつかめません。そこで第2回は、指定試験機関である省エネルギーセンター(ECCJ)の公式資料をもとに、試験の形・合格基準・課目合格の持ち越し・免状の条件・研修ルートをひと通りまとめます。
私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っています。エネルギー管理士は、計算問題でも文章の空欄に入る値を解答群から選ぶ形式なので、アプリの500問では、正解の理由だけでなく、ほかの選択肢がなぜ違うのかまで解説に書くようにしています。
エネルギー管理士試験の基本:受験資格なし・年1回・ネット申込のみ
エネルギー管理士は、省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)に基づく国家資格です。試験は経済産業大臣が行い、その事務を ECCJ が指定試験機関として担っています。2026年度の試験が第48回でした。
- 受験資格: 制限なし。学歴・年齢・性別・国籍は問われません(ECCJ 試験制度の概要)
- 受験手数料: 17,000円(非課税)。手引にある減額は、旧制度の熱管理士・電気管理士の免状を持つ人が課目Ⅰだけ受ける場合(10,000円)だけです(ECCJ 第48回試験の内容)
- 申込方法: 2026年度からインターネット申込みのみになり、紙の願書は廃止されました
- 試験地: 北海道・宮城・東京・愛知・富山・大阪・広島・香川・福岡・沖縄の10か所。会場は選べません
- 回数: 年1回。2026年度は 8月2日(日)に実施され、9月17日に合格発表がありました
- 資格の有効期限: ありません(更新や書き換えもなし)
次の2027年度の試験は、2027年8月1日(日)実施予定と ECCJ のお知らせに書かれています(ECCJ 熊本地震の措置のお知らせ 2026-09-18)。申込期間はまだ発表されていません。ECCJ の Q&A では、次年度の予定は例年4月ごろにわかるとしています。
熱分野か電気分野、どちらか1つを選んで4課目
試験には「熱分野」と「電気分野」の2つがあり、どちらか1つを選んで、その分野の4課目を受けます。
- 課目Ⅰ(共通): エネルギー総合管理及び法規
- 熱分野: 課目Ⅱ 熱と流体の流れの基礎/課目Ⅲ 燃料と燃焼/課目Ⅳ 熱利用設備及びその管理
- 電気分野: 課目Ⅱ 電気の基礎/課目Ⅲ 電気設備及び機器/課目Ⅳ 電力応用
大事なのは、どちらで受かっても免状は1種類で、熱・電気の区別がないことです。ECCJ の Q&A は、分野の選び方について「どちらの分野で取得しても得られる資格は全く同じもの」と書いています(ECCJ 試験Q&A 試験全般)。熱で取った人が電気を受け直す必要もありません。
なお、ボイラー・タービン主任技術者や電気主任技術者(電験)を持っていても、試験課目の免除はありません(同Q&A)。どちらの分野を選ぶべきかは、電験や実務との重なりで決まる話なので、次回の第3回でくわしく扱います。
1日380分の長丁場:課目の番号と時限の順番が違う
4課目は同じ日に、9:00〜17:40 の4時限で行われます。試験時間は 80分・110分・110分・80分の計380分です。

図のとおり、課目の番号と時限の順番が一致しません。熱分野は Ⅰ→Ⅱ→Ⅳ→Ⅲ、電気分野は Ⅰ→Ⅲ→Ⅳ→Ⅱ の順に受けます。ECCJ の手引もこの点に注意を促しています(ECCJ 第48回試験の内容)。体験記で「最後の課目」と書かれていたら、熱なら燃料と燃焼、電気なら電気の基礎のことです。
1日で4課目という形は、受けた人にとってもかなりの負担です。2023年に熱分野を受けた かぶまる さんは、「試験時間がとにかく長い!!!」と書いています。

もう1つ見落としやすいのが、課目Ⅳには熱・電気とも、4問中2問を選んで解く選択問題があることです。
- 熱分野の選択: 熱交換器・熱回収装置/冷凍・空気調和設備/工業炉・熱設備材料/蒸留・蒸発・濃縮装置・乾燥装置・乾留・ガス化装置
- 電気分野の選択: 電気加熱/電気化学/照明/空気調和
2025年に熱分野を約2週間の勉強で突破した 潮 さんは、試験当日に「え?科目IVって選択問題あるの?」と気づいたそうです。この方は結果的に合格していますが、どの2問を選ぶかは事前に決めておくのが基本です。
マークシートの選択式:計算問題も答えを選ぶ
試験はマークシート方式の筆記試験です。HB の鉛筆(シャープペンシル可)を使います。
問題は、文章の空欄に当てはまる字句・数値・式などを解答群から選ぶ形式です。計算問題でも、十分な有効桁数で計算した値に最も近い選択肢が正答になります(ECCJ 受験の手引 PDF)。
2026年度の受験者からは、計算の出し方が変わったという報告も出ています。熱分野で合格した 或る運転員の業務日誌 の筆者は、「今年の試験は計算結果を書かせる問題がなくなっていた」と書いています。電気分野で受けた 無からのビルメン の筆者も同じ趣旨を書いています。選択式になったぶん、選択肢の数値を当てはめて確かめる解き方が使えた、という声もありました。
計算に使う道具にもルールがあります。
- 電卓は1台だけ使える。関数電卓・プログラム電卓・スマホの電卓は禁止。貸し出しもありません
- 使える機能は四則演算・√(開平)・百分率・メモリーなどの範囲。√は試験の計算で使う場合があると手引に書かれています(ECCJ 電卓の取扱い)
- 熱分野の課目Ⅱには、指数・対数の数表が付きます
関数電卓に慣れている人ほど、普通の電卓で解く練習をしておく必要があります。
答えを選ぶ形式なので、ふだんの演習でもなぜその選択肢が正しく、ほかは違うのかまで確かめておくと本番で迷いにくくなります。ナレッジバンドルでは、スマホで1問ずつ解きながら各選択肢の正誤まで解説で読めるので、通勤中などのスキマ時間にこの確認を積み重ねられます。
合格基準は「各課目60%」:合計点ではない
合格基準は各課目とも配点の60%以上です。4課目の合計ではなく、1課目ずつ判定されます(ECCJ 試験制度の概要)。
2026年度の配点(標準解答で公表)と、60%の合格ラインは次のとおりです。
- 課目Ⅰ(共通): 200点 → 120点以上
- 熱分野: 課目Ⅱ 200点 → 120点/課目Ⅲ 110点 → 66点/課目Ⅳ 280点 → 168点
- 電気分野: 課目Ⅱ 150点 → 90点/課目Ⅲ 200点 → 120点/課目Ⅳ 200点 → 120点
配点は平成26年度から小問ごとに公表されています。ただし上の数字は2026年度のもので、毎年同じとは限りません。
課目ごとの判定なので、得意な課目で稼いで苦手な課目を補う、ということができません。体験記でも、1課目だけ基準に届かなかった例が目立ちます。
- 電気分野の そうだ電験取ろう の筆者は、専門3課目は合格したものの、課目Ⅰが自己採点で111点(55.5%)。「課目Ⅰはあと2問…悔しい結果となりました」と振り返っています
- ほかにも、熱分野の課目Ⅱがあと4点足りなかった人、課目Ⅰが1問足りなかった人がいます(第1回で紹介した1〜2問差の不合格)
1課目の取りこぼしを防ぐには、苦手な分野を早めに見つけて、そこを重点的に解き直すのが近道です。私たちのアプリで本番形式のテストを解くと、合格率と弱点カテゴリがグラフで出るので、「間違えた問題だけ」を繰り返す復習に回せます。
なお、ECCJ は個別の得点照会に応じません。合否通知書に書かれるのは課目ごとの合否だけで、体験記の点数の多くは標準解答を使った自己採点です。
課目Ⅰの200点の内訳は、省エネ法50点・情勢や概論50点・エネルギー管理技術の基礎100点です。「法規」という名前から暗記課目と思われがちですが、条文の問題は4分の1にとどまります。中身は第6回で扱います。
課目合格の「3年ルール」:落ちた課目だけ翌年以降に受ける
60%に届いた課目は「課目合格」となり、次の試験で免除されます。期間について、ECCJ は「合格した試験が行われた年の初めから3年以内」と定めています(ECCJ 試験制度の概要、規則第32条)。
たとえば2026年に課目合格した場合、2026年1月1日から3年以内なので、2026・2027・2028年の試験まで、と読めます。合格した年を含めて3回です。熊本地震の救済措置でも、令和6年度(2024年)の課目合格者の免除期限を2026年12月31日としており、この数え方と合っています(ECCJ 熊本地震の措置のお知らせ)。
仕組みの細かいルールも押さえておきましょう。
- 免除期間中の課目は受けられない。点数を上げるために受け直すことはできません
- 3年を過ぎた課目合格は無効。その課目は受け直しになります
- 免除を受けるには、申込時に前年度・前々年度の受験番号を入力する必要があります
- 4課目のうち一部の課目だけを受けることもできる。ただし手数料は同じ17,000円です
- 課目Ⅰは熱・電気共通なので、免除期間中なら分野を変えても有効。ただし、どちらかの分野で4課目合格すると課目Ⅰの課目合格は無効になります(ECCJ 試験Q&A 合格課目試験免除制度)
期限切れは、実際に起きています。電気分野の 人生迷走マン さんは、1年目に法規、2年目に機器、3年目に基礎に合格しましたが、残る1課目に届かないうちに1年目の法規が期限を迎えました。本人は「つまり、一年目の法規が復活となりました。」と書いており、最終的な合格は4年目です。
逆に、持ち越しをうまく使えば2年目の負担は小さくなります。体験記では、2年目は残り課目だけを15〜30時間ほどで仕上げて合格した例がありました。課目合格を前提にした2〜3年計画の組み立て方は、第9回でまとめます。
2026年は特例もあります。熊本地震で全課目を受けられなかった人は、申請すれば課目免除の期間が1年延び、手数料を2027年度に振り替えられます(申請は2026年10月15日〜2027年5月31日)。1課目でも受けた人は対象外です。
合格しても免状はすぐ出ない:実務1年以上が条件
試験に合格しただけでは、エネルギー管理士免状はもらえません。免状の交付を申請するときに、エネルギーの使用の合理化に関する実務に1年以上従事した証明が必要です。
- 実務の時期は合格の前後を問わない。合格してから実務を1年積んでも申請できます(ECCJ 試験制度の概要)
- 実務は指定工場でなくてもよく、熱・電気のどちらかで1年以上あればよい
- 設計・診断・提案、施工・工事など「納品する側」の仕事は実務に入らない。照明のスイッチを入れ切りするだけの業務も認められません(ECCJ 免状交付申請 Q&A)
- 令和元年度(2019年度)以降の試験合格者は、ECCJ に申請します。交付手数料は3,500円です(ECCJ 免状交付申請のご案内)
受験資格は無いのに、免状には実務が要る。ここを知らずに受ける人もいるので、仕事の内容が当てはまるかは早めに確認しておきましょう。
そもそも何に使う資格か:エネルギー管理者の選任
エネルギー管理士が必要とされる理由は、省エネ法の選任義務です。
原油換算で年3,000kl以上のエネルギーを使う「第一種エネルギー管理指定工場等」のうち、製造業・鉱業・電気供給業・ガス供給業・熱供給業の5業種は、エネルギー管理士免状を持つ人の中からエネルギー管理者を選任しなければなりません。人数は使用量に応じて1〜4人です(省エネ法第11条・施行令第4条、e-Gov 省エネ法施行令)。
体験記でも、仕事で必要になって受けた人や、会社の指示で受験を決めた人が目立ちます。
もう1つのルート「エネルギー管理研修」:仮申込は9月28日まで
実務経験が3年以上ある人は、試験ではなくエネルギー管理研修でも免状を取れます。取れる免状は試験と同じで、熱・電気の区別もありません(ECCJ エネルギー管理研修 受講の手引)。

2026年度(第49回)の研修の日程と条件は次のとおりです(ECCJ 研修の内容)。
- 仮申込(ネット入力): 2026年9月28日(月)まで
- 受講資格審査書類の提出: 10月9日(金)まで(当日消印有効)
- 講義: 9月16日〜12月4日にオンラインで視聴(合計33時間25分)。すべて視聴しないと修了試験を受けられない
- 修了試験: 12月13日(日)。マークシート方式、会場は宮城・東京・愛知・大阪・広島・福岡の6か所(定員あり)
- 受講料: 70,000円(非課税)
- 修了試験の課目合格は翌年度限り(試験の3年より短い)
試験との違いで気をつけたいのは次の3点です。
- 課目合格は互いに持ち越せない。試験で合格した課目は研修で免除されず、その逆もありません
- 研修の課目合格は翌年度だけ。試験の「3年以内」より短い
- 研修にも修了試験がある。講義を見れば取れるわけではなく、令和7年度は受験者973人に対して修了者556人でした(修了率は計算で約57.1%)
電験との関係では、電気分野で第一種・第二種電気主任技術者の免状を持つ人は、研修の一部の講義を受けずに修了試験を受けられます。試験のほうには、こうした優遇はありません。
体験記の中には、試験で2年かけて合格したあとに「今からなら研修を選びます」と書いた人もいます(けんしろう さん。記事から自身のブログへの誘導があります)。
どちらを選ぶかは前提で決まります。実務3年以上あり、費用を会社が負担してくれるなら、2026年度の研修(仮申込 9/28 まで)を検討する価値があります。12月の修了試験まで約2か月半あり、来年8月まで待たずに済むからです。実務が3年に満たない人、自費で受ける人は、受験手数料17,000円の国家試験(2027年8月1日予定)が基本になります。
まとめ:仕組みを知ると、対策の優先順位が決まる
- 熱か電気のどちらか1つを選び、1日で4課目・計380分。課目の番号と時限の順番が違う
- マークシートの選択式。計算も選択肢から選ぶ。関数電卓は使えない
- 合格基準は各課目60%。合計点で補えないので、1課目の取りこぼしが命取りになる
- 60%に届いた課目は合格した年を含めて3回持ち越せる。期限切れには注意
- 免状には実務1年以上(合格の前後は問わない)。納品側の仕事は対象外
- 実務3年以上なら研修ルートもある。2026年度の仮申込は 9月28日まで、書類は 10月9日まで
次回の第3回は、「熱と電気のどちらを選ぶか」です。免状は同じなのに、体験記を読むと選び方で勉強の負担が大きく変わります。電験の有無と実務の内容から、判断の目安を整理します。
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※この記事は2026年9月26日時点の公開情報をもとにしています。試験・研修の制度や日程は変わることがあるので、申込前に必ず省エネルギーセンター(ECCJ)の公式サイトで確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。ECCJ の過去問は無断での複製・転写が禁じられているため、この記事では問題文を載せていません。