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エネルギー管理士 課目Ⅰ(法規)対策:判断基準と基礎計算

公開 ・ ナレッジバンドル編集部

エネルギー管理士 課目Ⅰ(法規)対策:判断基準と基礎計算

エネルギー管理士 攻略シリーズの第6回です。この連載では、第1回で2023年以降の合格・不合格体験記41人分を読み込み、省エネルギーセンター(ECCJ)の公式情報と突き合わせて整理してきました。

今回は、熱分野・電気分野に共通の 課目Ⅰ「エネルギー総合管理及び法規」 を扱います。試験当日の最初の時限(9:00〜10:20の80分)に行われる課目です。

「法規」という名前から、条文を暗記する課目だと思われがちです。ところが配点を見ると、省エネ法の条文を問う問題は200点中50点(25%)だけ。いちばん大きい100点は、「判断基準」の数値と、熱・電気の両方の基礎計算で構成されています。この配点を知っているかどうかで、勉強の順番が変わります。

私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っています。判断基準の数値は、一度覚えても抜けやすいところです。アプリに「間違えた問題だけ」を出す絞り込みを入れているのは、抜けた数値だけを何度も解き直せるようにするためです。


課目Ⅰの配点:条文は200点中50点

2026年度(令和8年度)の課目Ⅰは、次の3問で200点でした(ECCJ 令和8年度 標準解答、受験の手引 試験の内容)。

  • 問題1 省エネ法及び命令: 50点(空欄12)
  • 問題2 エネルギー情勢・政策、エネルギー概論: 50点(空欄10)
  • 問題3 エネルギー管理技術の基礎: 100点(空欄20)

どの問題も、文章中の空欄に当てはまる字句や数値を解答群から選ぶマークシート形式です。空欄は合計42で、1空欄あたり2〜5点。合格基準は他の課目と同じく 60%=120点以上 です。

この配点が合否にどう効くかは、体験記の点数の内訳を見るとよくわかります。2024年8月の試験に熱分野で一発合格した Waterfall さんは、課目Ⅰが151点。内訳は問題1が26/50、問題2が35/50、問題3が90/100 でした。法規の問題1は半分ほどしか取れていないのに、問題3で稼いで合格ラインを大きく超えています。本人も「大問3の計算問題がほとんど正答していた」と振り返っています。

逆に言えば、条文の暗記だけに時間をかけて問題3を落とすと、問題1が満点でも合格点に届きません。課目Ⅰの対策は 「問題3で7〜8割、問題1・2で5〜6割」 くらいを目安に組み立てるのが現実的です(配点からの編集部の整理)。


問題1(50点):省エネ法は「2023年改正後」の条文で出る

出題されるのは試験年の4月1日時点の法令

課目Ⅰの法令問題は、試験の年の4月1日時点で施行されている法令 が対象です。2026年度は「令和8年4月1日時点」と受験の手引に明記されていました(受験の手引 試験の内容)。

ここで注意が必要なのが、2023年4月の省エネ法改正 です。法律の名前が「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」に変わり、対象が化石燃料だけでなく水素などの非化石燃料も含む全エネルギーに広がりました。あわせて、次のような新しい考え方が条文に入っています(省エネ法 第2条・第15条(e-Gov法令検索))。

  • 非化石エネルギー: 非化石燃料に加え、化石燃料由来の熱・電気に代えて使う熱(非化石熱)・電気(非化石電気)
  • 非化石エネルギーへの転換: 使うエネルギーに占める非化石エネルギーの割合を高めること
  • 電気の需要の最適化: 季節や時間帯による電気の需給の変動に応じて、電気の使用量を増やしたり減らしたりすること
  • 特定事業者は、エネルギーの使用の合理化に加えて、非化石エネルギーへの転換の目標 についても中長期計画を作る(第15条第2項)

改正前に作られた教材や、2022年度以前の過去問の法規部分は、そのままでは使えません。

法改正で1問・2問を落とした人たち

体験記には、この改正でつまずいた例がはっきり残っています。

  • ぷちあげチャンネル(とりさん) は、2023年に専門3課目に合格しながら、課目Ⅰだけ1問足りずに不合格。敗因として、非化石エネルギーの法改正で出題が変わったことへの対応不足を挙げています。翌2024年は課目Ⅰだけを受け、公式解答での自己採点は186/200でした。
  • そうだ電験取ろう の筆者も、2023年は課目Ⅰが自己採点111/200で不合格。「課目Ⅰはあと2問…悔しい結果となりました」と書いています。翌年は課目Ⅰの過去問15年分を解き込み、自己採点173/200で合格しました。
  • 2023年に電気分野で一発合格した Nojiと挑む資格の山(アフィリエイトリンクあり)の筆者も、反省点として法改正で入った「非化石熱」がノーマークだったことを挙げています。

2023年は改正法が試験に初めて反映された年です。落ちた人の差は1〜2問 という点も、第1回で見た「失敗の型」と重なります。

条文は「丸暗記」ではなく「過去問の前後」を読む

では、条文をどう覚えるか。2024年に熱分野で合格した トモテル さんは、最初に課目Ⅰから手をつけて法令問題で絶望したと書いたうえで、「正直に言って、法令丸暗記は不可能です(笑)」と言い切っています。

トモテルさんのやり方は、過去問の正解だけでなく、出題された条文の前後の用語まで e-Gov 法令検索で確認する こと。理由として「次の年に同じ条文なのに別の用語を答えさせるといったパターンがある」と書いています。

2026年度の問題1は、非化石エネルギーの定義、基本方針と事業者の努力義務、中長期計画と定期報告、連鎖化事業者、認定管理統括事業者などから出ていました。条文の穴埋めだけでなく、工場のエネルギー使用量(原油換算kL)から 指定区分やエネルギー管理者の選任数を判定する 事例問題もあります。このタイプは数値さえ覚えていれば確実に取れるので、後で紹介する数値表に入れておきます。


問題3の前半:判断基準は「基準」と「目標」をセットで覚える

問題3の穴埋めの柱が、経済産業省の告示 「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(以下、判断基準)です。省エネ法第5条にもとづいて、工場でエネルギーを使う事業者が取り組むべきことを定めたもので、大きく2つの部分に分かれています。

  • Ⅰ エネルギーの使用の合理化の基準: 守るべき「基準」(管理標準を決めて管理する、など)
  • Ⅱ エネルギーの使用の合理化の目標及び計画的に取り組むべき措置: 努力する「目標」

試験で狙われやすいのは、この2つで 同じ項目に別の数値が書かれている箇所 です。代表的なものを、判断基準の本文と別表から拾って図にしました。

  • 受電端の力率: 基準は 95%以上、目標は 98%以上。2026年度の問題3でも問われました
  • 空気比: 排ガス中の酸素濃度から 空気比=21÷(21−酸素濃度%) で求める。ボイラー・工業炉ごとに、容量と燃料の種類別の基準値・目標値がある
  • 廃ガス温度: 同じく容量・燃料別に基準値と目標値がある(例: 蒸発量が毎時30t以上の一般用ボイラーで液体燃料なら基準200℃・目標160℃)
  • エネルギー消費原単位: 中長期的にみて 年平均1%以上 低減させることが目標

数値は、ボイラーや工業炉の表をすべて丸暗記する必要はありません。まず力率の95%・98%と原単位の1%のような「1つだけの数値」を確実にし、空気比・廃ガス温度は 「目標のほうが厳しい(空気比は小さく、温度は低く)」 という向きと、よく出る区分の値から覚えるのが効率的です。

判断基準は2023年の改正に加えて、2025年12月26日にも一部改正 されています(経済産業省告示第185号・日本法令索引)。本文は省エネルギーセンターの省エネ・非化石転換法関係情報から経済産業省のPDFをたどれます。試験直前には最新の本文で数値を確かめてください。


問題3の後半:「自分の分野でない側」の計算を10個

問題3のもう1つの柱が、熱と電気の両方の基礎計算 です。2026年度は、理想気体の体積変化、カルノーサイクルの効率、排ガスの酸素濃度からの空気比、平板の熱伝導、放射(絶対温度の4乗)、湿り蒸気の比エンタルピー、火力発電の熱効率といった熱の計算と、単相RL負荷の電力、デマンド制御、変圧器の最高効率の条件、力率改善コンデンサの容量といった電気の計算が並んでいました。

つまり、熱分野の受験者も電気の計算を、電気分野の受験者も熱の計算を、課目Ⅰで少し解く ことになります。どちらも専門課目のいちばん基本の公式で解ける問題なので、自分の分野でない側の公式を10個ほど別に覚えておけば足ります。

  • 熱分野の人が覚える電気の公式: 有効電力=電圧×電流×力率、皮相電力・無効電力と力率の関係、力率改善に必要なコンデンサ容量、変圧器の効率と「銅損=鉄損」で最高効率になる条件、デマンド(需要電力)の考え方
  • 電気分野の人が覚える熱の公式: カルノー効率=1−低温側の絶対温度÷高温側の絶対温度、理想気体の状態方程式、熱伝導(フーリエの法則)、放射は絶対温度の4乗に比例、湿り蒸気の比エンタルピー、空気比の式

感覚をつかむために、編集部で作った例題を2つ置いておきます(過去問の転載ではありません)。

自作の例題1(熱分野の人向け・電気)

有効電力400kW、力率0.8の負荷の力率を0.95に改善したい。必要なコンデンサの容量は?

  • 力率0.8のとき tanθ=0.6÷0.8=0.75
  • 力率0.95のとき sinθ=√(1−0.95²)≒0.312、tanθ≒0.312÷0.95≒0.329
  • 必要な容量=400×(0.75−0.329)≒ 約168kvar

√の計算が入るので、試験では√キー付きの普通の電卓が役立ちます(関数電卓は使えません)。改善後の0.95は、ちょうど判断基準の「基準」の値でもあります。

自作の例題2(電気分野の人向け・熱)

ボイラーの排ガス中の酸素濃度が3.0%のとき、空気比は?

  • 空気比=21÷(21−3.0)=21÷18≒ 1.17

毎時30t以上の一般用ボイラーで液体燃料なら、基準空気比は1.1〜1.25なので基準の範囲内。目標(1.05〜1.15)にはまだ届いていない、という読み方になります。このように、判断基準の数値と計算は同じ問題の中でつながって出る ことがあります。


問題2(50点):情勢・概論は広く浅く

問題2は、エネルギー情勢・政策とエネルギー概論です。2026年度は、SI基本単位、揚水発電を題材にした位置エネルギーの計算、ウィーンの変位則、メタネーション・グリーン水素とブルー水素・CCUSといったテーマが出ていました。

範囲が広く、過去問と同じ知識がそのまま出るとは限りません。2026年度に熱分野で合格した 或る運転員の業務日誌 の筆者も、課目Ⅰは過去問で見たような問題が少なかったと書いています。ここは 過去問で頻出の単位・物理法則を押さえ、水素・CCUSなど脱炭素の用語は意味を説明できる程度にしておく くらいが、時間対効果のよいラインです。深追いするより、問題3に時間を回したほうが点になります。


80分の時間配分

課目Ⅰは80分で200点、1点あたり約0.4分です。配点から逆算すると、次のような配分が目安になります(公式の配点と時間からの編集部の計算)。

  • 問題1(法規・50点): 20分
  • 問題2(情勢・概論・50点): 20分
  • 問題3(管理技術の基礎・100点): 35分
  • 見直し: 5分

実際には、課目Ⅰは時間に余裕がある人が多いようです。2026年度に電気分野で受験した 無からのビルメン の筆者は25分で解き終えて60分で退出。前述のとりさんは60分で全問を解き終え、途中退室せずに残り20分を見直しに使いました。

ただし、化学工学レビュワーの筆者のように「最初の課目Ⅰが一番難しかったように思いました」と振り返る合格者もいます(化学工学レビュワー・アフィリエイトリンクあり)。前述のとおり1〜2問差で課目Ⅰを落とした例もあるので、時間が余ったら退出より見直しに使う のが安全です。


学習の順番:計算 → 判断基準 → 条文 → 直前の法改正チェック

体験記を見ると、課目Ⅰ(とくに法規)は後半・直前に回す合格者が多数派でした。2024年度に電気分野で合格した ジェイ さんは、2〜5月に課目Ⅱ〜Ⅳ、6月に課目Ⅰという順番で、「法規関係は最も重点的に勉強しました」と書いています。

一方で、直前すぎると間に合いません。課目Ⅰを試験2週間前から始めた Waterfall さんは、「法令はもう少し早めに取り組むべきだったと反省。」と書いています。前述のそうだ電験取ろうの筆者は、再受験の年に試験の2か月前から課目Ⅰに取り組みました。

ここまでの配点と体験記から、2027年8月の試験に向けた順番を整理すると次のようになります。

  1. 問題3の計算は、専門課目と並行して早めに: 課目Ⅱ・Ⅲの勉強で使う公式と同じなので、専門課目の公式を覚える時期に「課目Ⅰの問題3」も一緒に解く。自分の分野でない側の公式10個もこの時期に
  2. 判断基準の数値は、試験の3〜4か月前から: 力率・原単位・空気比・廃ガス温度などを、スキマ時間の問題演習で回す。冒頭で書いた「間違えた問題だけ」の絞り込みを使えば、数値表を別に作らなくても覚えるべき値が絞れていきます
  3. 条文(問題1)は、試験の2か月前から: 2023年改正後の内容に合わせた問題と、2023年度以降の過去問を中心に。古い年度の法規は、今の条文と見比べる材料として使う
  4. 直前(試験の1〜2週間前)に法改正の確認: とりさんは再受験の当日朝に資源エネルギー庁のサイトで法改正とエネルギー動向を確認したと書いています

課目Ⅰを問題演習で仕上げるなら、使う問題で最初に確かめたいのは、法規部分が2023年の改正に対応しているか です。改正前に作られた問題では、非化石エネルギーや電気の需要の最適化が抜けています。そのうえで、課目Ⅰならではの基準が2つあります。

  • 法令問題が、今の条文に合わせて直されているか: 2022年度以前の過去問の法規部分は、条文が変わっていてそのままでは使えません
  • 判断基準の数値に、根拠まで書いた解説があるか: 「基準」と「目標」のどちらの値かを取り違えやすいので、正解だけでなく、ほかの選択肢がなぜ違うかまでわかる解説が役に立ちます

この2つがそろっていれば、課目Ⅰは問題を解きながら理解まで進められます。ナレッジバンドルのエネルギー管理士の問題は、全問に正解の理由と各選択肢の正誤の解説が付いていて、解説に出てくる用語をタップすると専用の用語辞書が開きます。それでも腑に落ちなければ、その問題をそのまま AI に質問できます。条文の解説書を別に読み込まなくても、解く・読む・調べるをスマホ1つで回せる、という組み立てです。ただ、判断基準は2025年12月にも改正されているので、数値は最後に告示の本文で確かめるのが確実です。アプリ1つで完結できる教材の選び方は第5回で扱いました。

なお、ECCJ は平成22年度から令和8年度までの試験問題と正答を公開しています。解説はないので、答え合わせには使えても、「なぜその字句になるか」は別に確かめる必要があります。問題の全部または一部の無断複製・転写は禁止されています。


まとめ:課目Ⅰは「法規」の顔をした計算と数値の課目

  • 課目Ⅰは200点。条文(問題1)は50点=25%だけ。100点の問題3は判断基準と熱・電気の基礎計算
  • 法令は 試験年の4月1日時点。2023年の改正(非化石エネルギーへの転換・電気の需要の最適化)に対応した、解説つきの問題で演習する
  • 2023年は、法改正への対応不足で 1〜2問差で課目Ⅰを落とした 人がいた
  • 判断基準は 「基準」と「目標」の数値をセット で(力率95%・98%、原単位年1%、空気比・廃ガス温度)
  • 自分の分野でない側の公式を 10個ほど 覚えておく
  • 順番は 計算 → 判断基準 → 条文 → 直前の法改正チェック

次回の第7回は、熱分野の対策です。最難関とされる課目Ⅱ(熱力学・流体・伝熱)を落とさない勉強法と、課目Ⅲの燃焼計算を、体験記から整理します。


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※この記事は2026-09-26時点の公開情報をもとにしています。試験の制度・日程や法令・判断基準の内容は変わることがあるので、受験前に必ず省エネルギーセンター(エネルギー管理士試験)の公式サイトとe-Gov法令検索で確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。例題は編集部の自作で、過去問の転載ではありません。

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