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玉掛け技能講習の合図と指差呼称:手の合図・笛・声の出し方

公開 ・ ナレッジバンドル編集部

玉掛け技能講習の合図と指差呼称:手の合図・笛・声の出し方

玉掛け技能講習 攻略シリーズの第6回です。この連載は、第1回で受講者の体験記37件を読み込み、法令・告示・業界団体の解説と突き合わせて書いています。

今回のテーマは 合図と指差呼称 です。講習の中で「合図」の実技は1時間しかありません。それなのに、体験記でつまずいた話としていちばん多かったのが、実技のセリフ・合図・手順でした(37件中10件)。

  • 「特に合図がなかなか覚えられなくて苦戦した」(あある)
  • 笛と手の上げ下げの合図について「この部分が一番難しかったです」(ヒガシクワンブログ、【PR】を含む記事)
  • 「本番では緊張・疲れからか2つの合図をミスしました。」(キカイネット、【PR】を含む記事。この人は修了)

私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていて、玉掛け技能講習の学科4科目・500問を収録しています。合図は体で覚えるものなので、手の動きや笛・声の出し方はアプリでは練習できません。ただ、告示では学科の「玉掛けの方法」の範囲にも「合図の方法」が入っています。笛だけで合図してよいか、合図者はどこに立つか、手の合図はどの形か、といった決まりは問題として解けるので、「玉掛けの方法」291問の中に、合図の方法と合図者の原則を扱うセクションを設けました。

今回は、合図の決まりを法令・ガイドライン・業界団体の解説から整理し、体験記で多かった「声」のつまずき方と、その乗り越え方を見ていきます。


合図は学科と実技の両方に出てくる

まず、講習のどこで合図を習うのかを押さえます。玉掛け技能講習の科目と時間は、玉掛け技能講習規程(昭和47年労働省告示第119号)で決まっています(厚生労働省 法令等データベース)。

  • 学科「クレーン等の玉掛けの方法」(7時間): 範囲に「合図の方法」が含まれる
  • 実技「クレーン等の運転のための合図」(1時間): 範囲は「手、小旗等を用いて行う合図」
  • 免除: クレーン・デリック運転士や移動式クレーン運転士の免許、床上操作式クレーン・小型移動式クレーンの運転技能講習の修了者などは、力学と合図の科目が免除されます。クレーンの運転業務の経験が6か月以上ある人などは、合図の科目だけが免除されます

免除の扱いは機関の運用も確認が必要です。ある機関は「※合図免除者は「合図」の採点は免除されますが、講習時間の短縮はありません。」と案内し、受講当日の免除申請は受け付けないとしています(日本クレーン協会近畿支部)。免除に当たる人は、申込のときに申請してください。

実技の修了試験で合図が何点分になるかは、公式の配点表が公開されていません。体験記には、実技50点・合図20点・質量目測20点・ワイヤロープ選定10点の100点満点だったという記載があります(キカイネット、【PR】を含む記事)。講習機関が公開している基準では実技は70%以上で、採点は減点法です(ボイラ・クレーン安全協会)。合図だけでなく、玉掛け作業の中の掛け声や確認の声も減点の対象になりうる、というのが体験記から見える実態です。


法令での位置づけ:一定の合図と、合図者の指名

合図は「分かればどんな形でもよい」ものではありません。クレーン等安全規則第25条(移動式クレーンは第71条)で、事業者はクレーンの運転について 一定の合図を定め、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせる ことになっています。指名された人は決められた合図を行い、作業に従事する人はその合図に従います(e-Gov クレーン等安全規則)。

一定の合図を定めるのは事業場ごと、というのがポイントです。講習で習う合図の型も、機関で少しずつ違うことがあります。この記事で紹介する型は業界団体の解説のものなので、最終的には講習で教わる型に合わせてください。

業界団体の日本クレーン協会は、運転者が運転を止めるべき場合として、次の4つを挙げています(日本クレーン協会 クレーンの運転のための合図)。

  • 合図が不明りょうなとき
  • 定められた合図でないとき
  • 2人以上から合図を受けたとき
  • 指名された合図者以外の者が合図をしたとき

裏を返せば、合図は 指名された1人が、定められた形で、はっきり出す ものだということです。


手の合図:節度をつけて、はっきりと

合図の手段には、手・旗・声などがあります。日本クレーン協会の解説では、広く使われている手による合図について「定められた動作に節度をつけて明りょうに行うことである。」が大切だとしています。基本の動作は次のとおりです。

体験記の会場でも、巻上げは手を回す、巻下げは手を下げる、という形で教わっています(あある)。ほかにジブの上げ下げや伸縮、転倒の合図、建設業向けの変形(巻上げ・巻下げの前に手でももの上をたたくなど)も解説に載っていますが、玉掛けの講習でどこまで扱うかは機関によります。

覚えるときは、動作だけでなく 「なぜその形なのか」 をセットにすると混ざりにくくなります。巻上げは上に輪、巻下げは手のひらを下にして下へ、停止は手のひらを高く上げて止める、急停止は大きく振って目立たせる。運転者から遠くても見分けがつくように、動きの違いがはっきりした形になっています。


笛は補助。笛だけで合図してはいけない

講習では笛を使う会場が多く、体験記にも笛の話がよく出てきます。ただし、笛の位置づけははっきりしています。日本クレーン協会の解説は、次のように書いています。

「必要に応じ補助的に笛を併用することがある。しかし、笛のみの合図は災害を起こしやすいので行ってはならない。」

つまり、手の合図が主で、笛はそれを補うもの です。笛を吹いたから合図をしたことになるわけではありません。

笛の回数は、会場の型に従います。寺田鉄工所の note では、下ろすときは笛3回、巻くときは笛2回など、いろいろなことを一気に教わったと書いています(寺田鉄工所 note)。ああるさんの会場でも、巻き上げは手を回して笛2回、巻き下げは手を下げて笛3回でした。ただ、笛の吹き方の具体的な決まりを公式の文言で確認することはできませんでした。回数は講習で教わった型に合わせる のが前提です。

笛の準備で後悔した人もいます。岩手で受講した地域おこし協力隊の方は、周りの受講者の笛の音にキレがあるなか、自分の笛は間の抜けた音で「ちゃんとした笛を買えば良かったなとちょっと後悔した」と書いています(福島さん)。一方で、笛を会場で支給したという体験記もあります(いなか鉄工の日報、【PR】を含む記事)。持ち物は申込先の案内で確認し、自分で用意する場合は、しっかり鳴るものを選んでおくと安心です。


声の合図:「部位・程度・動作」の順に

手の合図と並んで覚えておきたいのが、声による合図です。日本クレーン協会の解説では、声の合図について「合図は、部位、程度、動作の順に続けて言うのを原則とする。」としています。

  • 部位: どこを動かすか(例: 主フック、補フック)
  • 程度: どのくらいか(例: ゆっくり、チョイ)
  • 動作: どう動かすか(例: 巻け、下げ、ストップ)

たとえば「主フック → ゆっくり → 巻け」の順です。巻けは「ゴーヘイ」、下げは「スラー」とも言います。旋回の「右」「左」は運転者から見た右・左である点も、解説に注記があります。また「運転者は、合図者の合図を復唱することが望ましい。」ともあり、声の合図は言いっぱなしでなく、相手に届いたかを確かめるものだと分かります。


いちばん大事なのは「退避」の指示と確認

体験記を読んでいて、合図の中でも繰り返し出てきたのが 退避 です。これは講習だけの作法ではなく、ガイドラインに書かれている手順です(玉掛け作業の安全に係るガイドライン、平成12年 基発第96号)。

  • 玉掛け者は「安全な位置に退避した上で、合図者に合図を行うこと。」
  • 合図者は「クレーン等運転者及び玉掛け者を視認できる場所に位置し」、玉掛け者から合図を受けたら「関係労働者の退避状況を確認するとともに、運搬経路に第三者の立入等がないことを確認した上で、クレーン等運転者に合図を行うこと。」
  • 作業中も「つり荷が不安定になった場合は、直ちにクレーン等運転者に合図を行い、作業を中断する等の措置を講じること。」

体験記でも、退避は減点に直結する場面として書かれています。

  • 2021年に受講した人は、実技の一番のポイントを退避の指示と退避の確認だったと振り返っています(アラサーおにいさんの備忘録)
  • 林業カレッジで受講した元事務職の方の会場では、「退避ヨシ」の復唱を怠るだけで減点でした(deku_nobou)
  • ああるさんは、補助者の「退避ヨシ」を忘れがちだったと書いています
  • 知恵袋では、自分と補助者の退避だけは確実に指示すること、という回答者談もあります(Yahoo!知恵袋)

退避を確かめないまま巻上げの合図を出すのは、ガイドラインの手順から外れる行為です。講習でのセリフの言い方は会場で違っても、「退避させる → 退避を確かめる → 合図する」の順番 は変わりません。


指差呼称は「指で差して、声に出す」

実技では、合図のほかに、確認のたびに対象を指で差して声に出す 指差呼称 が求められます。体験記に出てくる掛け声を並べると、次のようなものです。

  • 「ワイヤヨシ!や作業範囲ヨシ!などの掛け声を忘れてしまうと減点される」(いなか鉄工の日報、【PR】を含む記事)
  • 一番きつかったのはセリフだったという人の会場では、「フック良し!」「アイ部良し!」(Hiroshi Yamaguchi)

この人は本番で「緊張のあまり、セリフが飛んでしまった」そうです。補助の2人が小声で教えてくれて、最後までやり切って修了しています。

掛け声の文言や順番は会場ごとに違います。大事なのは、言葉を丸暗記するより 何を確かめているのかを分かって言う ことです。フックが重心の真上にあるか、ワイヤが正しく掛かっているか、作業範囲に人がいないか。確かめる対象が分かっていれば、言葉が多少違っても、確認そのものは抜けにくくなります。


声が小さい・迷うと声が落ちる:体験記の声

合図と指差呼称で、体験記が繰り返し書いているのが 声の大きさ です。

声が小さくなるのは、多くの場合、次に何を言うか迷っているときです。福島さんは、発声をただ暗記するのでなく「なぜその発声をするのか」を考えると手順が頭に入ったと書き、最後まで声を張れるように練習して臨んで修了しています。

逆に、緊張で崩れた例もあります。実技で不合格になった27歳の男性は、練習を何周かしたのに「緊張からか前言えてたことが抜けてたり」したと書いています(Yahoo!知恵袋)。上司からは責められず、一緒に合図を覚えようと言われたそうです。

合図をミスしても修了した人の話(キカイネット、アラサーおにいさんの備忘録の会場)もありますが、実技は減点法で、70%に届かなければ不合格です。「ミスしても大丈夫」と考えず、声と順番を体に入れておくのが確実です。


講習の前と講習中にできること

合図と指差呼称は、講習で実際に体を動かして覚えるものです。そのうえで、体験記と公式の資料から、講習の前と講習中にできることをまとめます。

  1. 手の合図の形を一度見ておく: 日本クレーン協会の解説は無料で読めます。呼出し・巻上げ・巻下げ・停止・急停止の形を一度体でなぞっておくと、実技の1時間を細かい修正に使えます。ただし、形は講習の型に合わせ直してください
  2. 決まりの意味を先に知っておく: 笛は補助、合図者は指名された1人、退避してから合図、合図者は運転者と玉掛け者が見える場所に立つ。これらは学科「玉掛けの方法」の範囲でもあります
  3. 声に出して練習する: 配られた手順の紙を家で読み、ぶつぶつ口に出して予習した人もいます(Yahoo!知恵袋)
  4. 他の人の練習を頭の中でなぞる: 「他の人の練習を見ながら真似して覚えていきました」(寺田鉄工所 note)。他人の作業を見ると分かった気になるので、「目をつぶって、想像で作業を行なっていくことです。」と書いた人もいます(林業・特殊伐採のブログ)
  5. 笛と持ち物を確認する: 申込先の案内で、笛が支給か持参かを確かめておく

2の「決まりの意味」は、私たちのアプリでも学科の予習・復習として問題で確かめられます。講習の夜に、その日に習った合図の決まりを解き直しておくと、翌日の実技で「なぜこの順番か」を考えながら動けます。手の形や声の大きさは、講習の時間で身につけてください。


まとめ

  • 合図は学科(玉掛けの方法)と実技(1時間)の両方に出てくる。実技の配点の公式な表は無いが、体験記では100点中20点の会場も
  • クレーン則で、事業者は 一定の合図を定め、合図者を指名 する。型は講習で教わるものに合わせる
  • 手の合図は「節度をつけて明りょうに」。笛は補助で、笛だけの合図はしてはならない(日本クレーン協会)。笛の回数は会場の型
  • 声の合図は 部位・程度・動作 の順。運転者は復唱が望ましい
  • いちばん大事なのは 退避してから合図 と、合図者による退避・第三者の確認(ガイドライン)
  • 声が小さくなるのは迷ったとき。なぜその声を出すのか を分かっておくと、緊張しても崩れにくい

次回の第7回は、実技の作業の流れと、減点されやすい場面 を取り上げます。ガイドラインに沿った作業の手順と、体験記で多かったミスを並べて見ていきます。


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※この記事は2026-09-28時点の公開情報をもとにしています。講習の科目・時間・免除、費用、合図の型や持ち物は機関によって違ったり変わったりすることがあるので、受講前に必ず申込先の登録教習機関の案内と、厚生労働省の玉掛け技能講習規程で確認してください。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。

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