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玉掛け技能講習の玉掛けの方法:クレーンの知識とつり角度

公開 ・ ナレッジバンドル編集部

玉掛け技能講習の玉掛けの方法:クレーンの知識とつり角度

玉掛け技能講習の学科は12時間あります。そのうち 7時間が「クレーン等の玉掛けの方法」、1時間が「クレーン等に関する知識」 です。学科のおよそ3分の2を、この2科目で過ごすことになります(玉掛け技能講習規程)。

この連載は、第1回で玉掛け技能講習の体験記37件を読み込み、法令・告示や業界団体の資料と突き合わせて「講習の前に何を知っておけば慌てないか」を整理しているものです。第5回の今回は、学科でいちばん長い「玉掛けの方法」と、その入口になる「クレーンの知識」を扱います。

私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていて、玉掛け技能講習の500問は、法定の学科時間の比 1:3:7:1 に合わせて配分しました。そのため、全体の半分を超える291問が「玉掛けの方法」で、クレーンの知識は42問です。講習でいちばん時間を使う科目に、問題もいちばん多く割いています。


学科12時間のうち8時間が「方法」と「クレーン」

告示が定める学科は次の4科目です。

  • クレーン等に関する知識(1時間): 種類と型式、構造と機能、安全装置とブレーキ
  • 玉掛けに必要な力学に関する知識(3時間): 力、重心、摩擦、質量、荷重、玉掛用具の強さなど
  • クレーン等の玉掛けの方法(7時間): 一般的な作業方法、玉掛用具の選定と使い方、基本動作(安全作業方法を含む)、合図の方法
  • 関係法令(1時間): 安衛法・施行令・安衛則・クレーン則の関係条項

「方法」は時間が長いぶん、覚える中身も多い科目です。ただ、中身の骨格ははっきりしています。厚生労働省の通達「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」(平成12年2月24日 基発第96号)に、つり角度、掛け方ごとの注意、玉掛け者が守る手順がまとめて書かれているからです。全文は日本クレーン協会のサイトで無料で読めます(ガイドライン全文)。

修了試験の学科について、講習機関が公開している基準では、合計60%以上、かつ各科目40%以上が合格の条件です(ボイラ・クレーン安全協会)。「方法」で点を稼げても、1時間しかない「クレーンの知識」を落とすと足切りにかかります。どちらも手を抜けない、というのが今回の前提です。

なお、学科の問題数や形式は会場で違います。体験記では20問・40問・50問、四択・三択・○×とばらばらでした。ある受講者の会場では50問のうち玉掛けが25問だったそうですが(キカイネット【PR】)、これはその会場の話で、どこでも同じとは限りません。


つり角度は「原則90度以内」、半掛けやクランプは60度以内

「方法」の中で、数字として最初に押さえたいのがつり角度です。つり角度は、2本のロープがフックの下でなす角度のことで、2本4点つりでは対角にあるロープのなす角度を指します(日本クレーン協会)。

ガイドラインは、共通事項として、つり角度は「原則として90度以内であること。」と定めています。そのうえで、掛け方や用具によってはさらに厳しくしています。

  • 2本4点半掛けつり: 荷の揺れでロープの掛け位置が動くことがあるので、原則60度以内。当て物などでずれない措置も講じる
  • 3点調整つりで、支え側があだ巻き・目通し・半掛けの場合: ロープが横滑りしない角度(60度程度以内)
  • クランプ・ハッカーを使う方法: つり角度は60度以内
  • 横つりクランプ: 掛け幅角度は30度以内

業界団体の日本クレーン協会は、つり角度が大きくなるとロープのアイがフックから外れることがあるとして、「このためつり角度は60度以内となるようにする。」と解説しています。ガイドラインの「原則90度」と、業界団体の「60度以内」は、出どころが違う数字です。どちらを答えにするかは問題文の聞き方しだいなので、講習で配られるテキストの書き方に合わせて覚えるのが確実です。

ちなみに、「つり角度60度以内は法律で決まっている」という説明を見かけることがありますが、クレーン則の条文に角度の数値はありません。角度はガイドラインと業界団体の解説の話です。

角度を開くと、なぜ危ないのか

同じ荷でも、つり角度が大きくなるほど1本のロープにかかる張力は大きくなり、ロープを内側に引き寄せる力も働きます(日本クレーン協会)。

ワイヤロープ加工会社の資料にある張力係数は、0°で1.00、60°で1.16、90°で1.41、120°で2.00です(萩原商会の資料)。2本つりで120°まで開くと、1本のロープに荷の全質量分の張力がかかります。2本でつっているのに、1本でつっているのと同じ負担になるわけです。

この張力係数は、力学の科目でロープの太さを選ぶ計算にもそのまま出てきます。計算の型は第3回で扱ったので、今回は「角度を開くほど1本あたりの負担が増える」という向きだけ覚えておけば十分です。

深しぼりは2〜3倍、あや掛けは2倍

角度のほかに、ガイドラインが倍率で示している注意が2つあります。

  • 目通し部を深しぼりする場合は、ロープに通常の2倍から3倍の張力が作用するものとして、それに見合った用具を選ぶ
  • あや掛けは、ロープの交差部に通常の2倍程度の張力が作用するものとして用具を選ぶ

どちらも「見た目は同じ太さのロープでも、掛け方しだいで負担が倍以上になる」という話です。ガイドラインは深しぼりについて、ロープに「通常の2倍から3倍の張力が作用するものとして」選ぶよう書いています。


ガイドラインに書かれた「やってはいけないこと」

つり角度のほかに、ガイドラインの共通事項には、学科の正誤問題にしやすい決まりが並んでいます。

  • 用具は、必要な安全係数を確保するか、定められた使用荷重の範囲内で使う
  • フックの上面・側面でワイヤロープが重ならないようにする
  • 「クレーン等の作動中は直接つり荷及び玉掛用具に触れないこと。」
  • ロープなどを外すとき、「クレーン等のフックの巻き上げによって引き抜かないこと。」
  • 2本つりでは、荷が回転しないよう、つり金具が荷の重心より上に付いていることを確かめる
  • 汎用クランプは荷の形に合ったものを2個以上使う。溶接・改造したハッカーは使わない

さらに、玉掛け者が行うこととして、重心を見極めて指示された方法で玉掛けをし、「安全な位置に退避した上で、合図者に合図を行うこと。」とあります。地切りについては「地切り時につり荷の状況を確認し、必要な場合は、再度着地させて玉掛けをやり直す等の措置を講じること。」、荷を下ろしたあとは「玉掛用具の取り外しは、着地したつり荷の安定を確認した上で行うこと。」です。

これらは学科の知識であると同時に、実技の手順の骨格でもあります。「退避してから合図」「地切りで止めて確認」「安定を確かめてから外す」の3つは、実技の回(第7回)でも中心になります。学科の段階で「なぜその順番なのか」を理解しておくと、実技で手順を覚えるときに意味がつながります。


掛け方の長所・短所は「なぜ」とセットで覚える

「方法」のもう1つの柱が、掛け方の種類です。日本クレーン協会の解説では、フックに掛ける方法とつり荷に掛ける方法に分けて、それぞれの長所と短所が整理されています(日本クレーン協会 玉掛けに関する知識)。

いくつか、理由と一緒に覚えやすいものを挙げます。

  • 目掛け(フック側): アイをフックに掛ける方法で、協会の解説は「最も標準的で安全な掛け方である。」としています
  • 半掛け(フック側): 短所として「ワイヤロープが滑って危険である。」。両側の張力がそろわないとフック上をロープが滑る。だからガイドラインも、2本4点半掛けつりの角度を60度以内に絞っている
  • 目通し(絞り): 荷を絞り込むので滑りにくい一方、「絞りの交点部分の強度が低下する。」。深しぼりで張力が2〜3倍になるという、ガイドラインの数字とつながる
  • あや掛け: 2本のロープを荷の底で交差させる方法で、「円板形状の物に最適なつり方である。」。交差部の強度が下がるので、ガイドラインの「2倍程度」の話につながる
  • 1本づり: 目通しの解説で「1本づりは荷が回転するので好ましくない。」とされている

掛け方は名前だけ覚えようとすると混ざります。「どこが弱くなるのか」「だから角度や倍率をどう決めているのか」をセットにすると、ガイドラインの数字と協会の解説が1本の話になります。


「クレーン等に関する知識」は1時間。用語に慣れておく

学科の「クレーン等に関する知識」は、告示の範囲でいうと、クレーンの種類と型式、構造と機能、安全装置とブレーキです。時間は1時間だけですが、足切りがある以上、落とせない科目です。

体験記に出てくる出題例を見ると、形がつかめます。

  • ある受講者の会場(いなか鉄工の日報【PR】)では、移動式クレーンでないものを選ぶ問題、天井クレーンの運動でないものを選ぶ問題、安全装置でないものを選ぶ問題が出たと書かれています。天井クレーンの運動は、巻上げ・横行・走行の3つです
  • 別の受講者の会場(アラフォーママのお家探し)では、クレーンの説明の○×、巻過防止装置と巻過警報装置の区別、そして「ジブを伸ばすと、持ち上げられる荷重は大きくなるか、小さくなるか」という問題が出たそうです。答えは「小さくなる」です

「〜でないものを選ぶ」形の問題は、それぞれの言葉の意味が分かっていないと消去法が使えません。巻過防止装置と巻過警報装置のように名前がよく似たものは、講習で配られるテキストで違いを確かめておくと安心です。法令側では、外れ止め装置について、備えているクレーンでは使うこと(クレーン則第20条の2)、移動式クレーンでは常に使うこと(第66条の3)が決まっています(e-Gov クレーン則)。

いちばんの壁は、専門用語

この科目でつまずく原因は、中身の難しさより言葉の多さです。畑違いから受講した人は、講師が専門用語を多用したことをこう書いています。

「専門用語をバンバン使うので戸惑いました」(アラフォーママのお家探し)

戸惑った言葉として挙げているのは、ジブ・デリック・アウトリガーです。同じ人は「全く畑違いの私は、ドキドキしながら講義を受けました。」とも書いています(同)。この人は、先生が触れた所にマーカーを引いて復習し、学科を通過しています。

講義は用語を知っている前提で進むことがあります。用語の意味を講習の前に一度見ておくだけで、講義を「初めて聞く話」ではなく「答え合わせ」として聞けるようになります。私たちのアプリでは、解説に出てくる用語をタップすると専用の用語辞書が開き、講習の夜に「間違えた問題だけ」を解き直すこともできます。ただし、アプリで練習できるのは学科の知識までです。実技の動きや声の出し方は、講習で教わって体で覚えるものです。


講習の前にやっておけること

「方法」と「クレーンの知識」に向けて、講習の前にできることを3つにまとめます。

  1. ガイドラインを一度、通して読む: 無料で読めて、学科「方法」と実技の手順の骨格がそのまま書かれています
  2. つり角度と倍率の数字を先に覚える: 原則90度、半掛け・クランプ・ハッカー60度、横つりクランプ30度、深しぼり2〜3倍、あや掛け2倍
  3. クレーンの用語に一度触れておく: ジブ、デリック、アウトリガー、天井クレーンの3つの運動、巻過防止装置など

体験記37件の中に、講習の前に問題集やアプリで演習したと書いた人はいませんでした。体験記に多かったのは、講師が出ると言った所に線を引き、その日のうちに復習するやり方です。ただ、学科には各科目40%の足切りがあり、「方法」は覚える量が多く、「クレーンの知識」は用語が多い科目です。予習は必須ではありませんが、講義についていけなくなる不安を減らすには役に立ちます。


まとめ

  • 学科12時間のうち、「玉掛けの方法」が7時間、「クレーン等に関する知識」が1時間。各科目40%の足切りがあるので、どちらも落とせない
  • 「方法」の骨格は「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」。つり角度は原則90度以内、半掛け・クランプ・ハッカーは60度以内、横つりクランプは30度以内
  • 深しぼりは通常の2〜3倍、あや掛けは2倍程度の張力として用具を選ぶ
  • 「退避してから合図」「地切りで確認」「安定を確かめてから外す」「巻上げで引き抜かない」は、学科の知識であり実技の手順でもある
  • 掛け方は「どこが弱くなるか」とセットで覚えると、ガイドラインの数字とつながる
  • 「クレーンの知識」は用語に慣れることが先。天井クレーンの運動、安全装置、ジブの問題は体験記にも出てくる

次回の第6回は、実技の「合図」を扱います。手の合図、笛の位置づけ、声の出し方と「退避ヨシ」まで、体験記でつまずきの多かった場面を整理します。


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※この記事は2026-09-28時点の公開情報をもとにしています。講習の日程・費用・修了試験の形式は登録教習機関ごとに違うので、受講前に申込先の機関の案内で確認してください。法令・ガイドラインはe-Gov 法令検索や厚生労働省の原文で確かめられます。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。

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