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玉掛け技能講習の力学:質量・張力・モード係数の計算の型

公開 ・ ナレッジバンドル編集部

玉掛け技能講習の力学:質量・張力・モード係数の計算の型

玉掛け技能講習 攻略シリーズの第3回です。第1回では、ブログや note に公開されている受講体験記37件を読み込み、修了する人とつまずく人の違いを整理しました。今回はその中から、学科でいちばん「頭を使う」と言われる 力学 を取り上げます。

体験記には、こんな声がありました。

  • 「筆記試験に関しては意外に頭を使いました」(deku_nobou)
  • 「ノー勉だと普通に危ない」(いなか鉄工の日報。記事内にアフィリエイト広告の表示あり)

私たちは資格の問題集アプリ「ナレッジバンドル」を作っていて、玉掛け技能講習の学科500問のうち125問を力学にあてています。学科の講習時間の比(1:3:7:1)に合わせた配分です。力学の講習は3時間しかありませんが、各科目に足切りがあるので、講習の前に計算の型に一度触れておくと、講義を「答え合わせ」として聞けると考えています。

今回は、玉掛けの力学で出てくる計算を 3つの型 に分けて、式と数字の出どころを整理します。


力学は学科3時間。でも足切りがある

玉掛け技能講習は国家試験ではなく、登録教習機関が行う講習(学科12時間+実技7時間)で、最後にその機関で修了試験を受けます。学科4科目の時間は、告示(玉掛け技能講習規程)で次のように決まっています。

  • クレーン等に関する知識: 1時間
  • 玉掛けに必要な力学に関する知識: 3時間
  • クレーン等の玉掛けの方法: 7時間
  • 関係法令: 1時間

力学の範囲として告示に挙がっているのは、力の合成・分解・つり合いとモーメント、重心と物の安定、摩擦、質量、速度と加速度、荷重、応力、玉掛用具の強さです。

合格基準は告示には数字がありません。講習機関が公開している基準では(ボイラ・クレーン安全協会)、学科は 合計60%以上、かつ各科目40%以上。力学だけ極端に取れないと、ほかの科目が良くても修了できません。

学科の問題数は会場でばらばらです。体験記では20問(寺田鉄工所の note)、40問(あある)、本人の記憶で50問・うち力学10問(キカイネット。【PR】の記事)と分かれていて、「玉掛けの学科は◯問」とは言えません。

つまずいた声も、力学に集まっています。

  • 2日目の重心の計算で、公式を覚えるのに少し苦戦した(寺田鉄工所の note)
  • 数字系は少し難しい、と振り返っている(いなか鉄工の日報)
  • 計算は算数レベルだが、久しぶりの単位換算で軽くテンパった(庶民の生きがいブログ)

さらに、実技の日に 質量の計算やワイヤロープの選定を筆記で解く会場 もあります(寺田鉄工所の note・いなか鉄工の日報)。力学の型は、学科だけでなく実技の筆記にもつながっています。


型1 質量=体積×1m³あたりの質量

いちばん基本の計算です。日本クレーン協会の解説では、質量(t)=体積(m³)×1m³あたりの質量(t/m³)。1m³の水がちょうど1tなので、「1m³あたりの質量」は比重と同じ数字になります(日本クレーン協会「力学に関する知識」)。

同じページの表から、玉掛けでよく出る材料を抜き出すと次のとおりです。

  • 鉛 11.4/銅 8.9/鋼 7.8/鋳鉄 7.2
  • アルミニウム 2.7/コンクリート 2.3/土 2.0/砂利・砂 1.9
  • かし 0.9/すぎ・ひのき 0.4

鋼は7.85とする資料もあります。 講習では、講習で配られるテキストの値に合わせてください。体験記では、鋼7.8・コンクリート2.3で解いた人が複数います。比重を覚えておく必要がある、と書いた人(あある)も、教科書の表を覚えていたので実技の筆記が解けた、と書いた人(寺田鉄工所の note)もいました。

計算例を3つ挙げます。

  • 鋼板 2m×1m×厚さ0.05m → 体積0.1m³×7.8=0.78t
  • 丸棒 直径0.2m×長さ3m → 0.785×0.2²×3≒0.0942m³ → ×7.8≒0.73t
  • コンクリート 2m×2m×2m → 8m³×2.3=18.4t

ミスが出やすいのは単位です。厚さ50mmは0.05m、直径200mmは0.2mと、先に全部をmにそろえてから掛ける。円柱の体積は「直径²×0.785×長さ」か「半径²×3.14×長さ」のどちらかに決めておくと迷いません。

なお、実技の質量目測では、体積×比重にさらに1.1を掛ける、目測の2割増しを質量とする、など会場ごとに指示が違います(いなか鉄工の日報・あある)。共通しているのは 軽いほうに間違えてはいけない ことで、目測の話は第8回でくわしく扱います。


型2 1本の張力=質量÷本数×9.8×張力係数

2本以上のロープでつると、ロープどうしの角度(つり角度)が広がるほど、1本にかかる力が大きくなります。2本4点つりのつり角度は、対角にあるロープのなす角度で見ます(日本クレーン協会「玉掛け」)。

1本の張力は、メーカー資料の整理では次の式で出します(萩原商会 お役立ち資料140)。

1本の張力(kN)=質量(t)÷本数×9.8×張力係数

張力係数は、つり角度0°で1.00、30°で1.04、60°で1.16、90°で1.41、120°で2.00。1÷cos(つり角度÷2)で計算できる値です。

ここで押さえたいのが 120° です。係数が2.00なので、2本でつっていても、1本に荷の全質量分の力がかかります。4tの荷なら、2本それぞれに4t分。角度を広げるとロープを2本にした意味がなくなる、という典型問題です。

安全の面では、玉掛け作業の安全に係るガイドライン(平成12年 基発第96号)が、つり角度は原則90度以内、2本4点半掛けつりなどは原則60度以内としています(日本クレーン協会掲載のガイドライン全文)。なお、クレーン等安全規則に角度の数値はありません。「60度以内は法律」は誤解です。

張力が出たら、次は 安全係数 です。クレーン等安全規則 第213条で、玉掛け用ワイヤロープの安全係数は 6以上(安全係数=切断荷重÷かかる荷重の最大値)と決まっています(e-Gov クレーン等安全規則)。

  • 4t・2本・30° → 4÷2×9.8×1.04=20.384kN → ×6=122.304kN以上の切断荷重が要る(萩原商会 お役立ち資料140の例)
  • 8t・4本・90° → 8÷4×9.8×1.41≒27.63kN → ×6≒165.78kN → 候補表から切断荷重174.4kNの 18mm を選ぶ(萩原商会 お役立ち資料141の例)

いなか鉄工の日報の筆者は、質量を掛け数で割って張力係数を掛けた値を基本安全荷重とし、表からロープを選ぶやり方で解いていました(9.8は掛けない形)。本人は、張力係数は学科でも出るので覚えるように、と書いています。式の形(9.8を掛けるかどうか)は会場のテキストに合わせる。ここも講習で確かめる点です。


型3 基本安全荷重=つり荷の質量÷モード係数

ロープを選ぶ問題では、モード係数 を使う方法も出てきます。掛け本数とつり角度ごとに決まった係数で、メーカー資料では次のように整理されています(萩原商会 お役立ち資料141、大洋製器工業)。

  • 基本安全荷重=つり荷の質量÷モード係数
  • 安全につれる質量=基本安全荷重×モード係数

2本つりのモード係数は、0°で2.0、30°以下で1.9、30〜60°以下で1.7、60〜90°以下で1.4、90〜120°以下で1.0です(3本つり・4本つりの係数もあります)。

  • 例: 3.4tの荷を2本・60°でつる → 3.4÷1.7=基本安全荷重2t以上 のロープを選ぶ
  • 逆に、基本安全荷重2tのロープ2本・60°なら → 2×1.7=3.4tまで

この表の出典には注意が要ります。 メーカー資料は「玉掛作業の安全に係るガイドライン」を出典と書いていますが、私たちはガイドライン原本でこの表を確認できていません。同じ資料にある、4本掛けでは原則として3本掛け用の係数を使うという扱いも、講習テキストでどう教えるかは未確認です。講習で配られるテキストの表と説明に合わせてください。

覚える量を減らすコツもあります。モード係数は、ほぼ 本数÷張力係数 になっています。2本・60°なら 2÷1.16≒1.72 で、表の1.7とそろいます。張力係数の表を覚えておけば、モード係数はそこから出せる、と整理できます。

体験記では、モード係数の表は試験に載っていた、という会場もありました(アラフォーママのお家探し)。表を丸暗記するより、表を使って式に入れる手順 に慣れておくほうが、会場の違いに左右されません。


計算以外の力学:モーメント・重心・摩擦・滑車

力学の3時間には、計算の型のほかに「言葉で問われる」論点もあります。日本クレーン協会の解説から、出題例として体験記に出てきたものを中心にまとめます。

  • 力の三要素: 大きさ・向き・作用点。力の合成は平行四辺形で考え、分解はその逆
  • モーメント: 力×距離(M=F×L、単位N・m)。天びん棒のつり合いは 9.8m₁L₁=9.8m₂L₂。例えば長さ3mの棒の両端に2tと1tの荷があれば、支点(重心)は2tの側から1mの位置、つまり 重いほうの近く に来ます
  • 重心: 置き方を変えても変わらず、物体の外にあることもある。底面が広く重心が低いほど安定する。ガイドラインでは、2本つりでつり金具が重心より上にないと荷が回転するとしています
  • 摩擦: 摩擦力は垂直にかかる力に比例し、接触面積には関係しない。動いているときの摩擦力は、止まっているときより小さい。ころがり摩擦はすべり摩擦よりずっと小さい
  • 滑車: 定滑車は力の向きを変えるだけ。動滑車は半分の力で済むが、ロープを2倍引く。動滑車2つ+定滑車2つで4分の1
  • 荷重と応力: 引張・圧縮・せん断・曲げ・ねじり。緩んだロープを急に巻き上げると衝撃荷重がかかる。応力=荷重÷断面積

アラフォーママのお家探しの筆者は、覚えている出題として、力の三要素、力のモーメントの計算、比重の多い順(鉛>銅>鋼)、物体の安定、定滑車と動滑車の計算、安全係数6、基本安全荷重の式、ワイヤロープの選定計算を挙げています。この会場では、ここまでの内容がほぼそのまま出ていたことになります。


講習の前と講習中にしておくこと

講習は、講習で配られるテキストで一から教わる前提です。受講は法令で必須ですが、予習が求められているわけではありません。ただ、第1回で数えたとおり、37件の体験記に、講習の前に問題集やアプリで演習したと書いた人は1人もいませんでした。そのうえで力学については「意外に頭を使いました」「数字系は少し難しい」という声が残っています。

そこで、力学については次の順番をすすめます。

  1. 講習の前: 3つの型(質量・張力・モード係数)の式を一度見て、単位をそろえて計算してみる。比重(鋼・コンクリート)と張力係数(60°・90°・120°)の数字に目を通しておく
  2. 講習中: 講師が「ここが出る」と言った所に線を引く(いなか鉄工の日報・アラフォーママのお家探しなど)。力学の日の夜に、その日の計算をもう一度解く。寺田鉄工所の note では、1人は講習の日の夜に帰宅してから復習し、もう1人は1日目の夜に翌日の目標として計算の練習を挙げていました
  3. 修了試験の前: 鋼の比重・式の形・モード係数の表の扱いを、配られたテキストの書き方にそろえる

私たちのアプリでも、力学の125問すべてに解説を付け、正解の理由と各選択肢の正誤を確かめられるようにしています。解説の中の「張力係数」「基本安全荷重」のような用語はタップすると専用の用語辞書が開き、「間違えた問題だけ」に絞って解き直すこともできます。講習の夜に、その日の範囲だけを解き直す使い方を想定しています。

一方で、実技の質量目測の感覚や、玉掛けの体の動きはアプリでは練習できません。そこは講習の実技の時間に、実物を測って身につけるものです。電卓を試験で使えるかどうかも機関で違い(いなか鉄工の日報は持参して使用、アラサーおにいさんの備忘録の会場は計算機なし)、申込先の機関の案内で確認してください。


まとめ

  • 力学は学科3時間だが、講習機関が公開している基準では 各科目40%以上 の足切りがある
  • 型1: 質量=体積×1m³あたりの質量。単位をmにそろえる。鋼は7.8(7.85の資料もある。テキストに合わせる)
  • 型2: 1本の張力=質量÷本数×9.8×張力係数。120°では1本に全質量分。ワイヤロープの安全係数は法令で6以上
  • 型3: 基本安全荷重=質量÷モード係数。表の出典と扱いはテキストで確認。モード係数≒本数÷張力係数
  • つり角度は、ガイドラインで原則90度以内(半掛けなどは60度以内)。法令に角度の数値はない
  • モーメント・重心・摩擦・滑車は「言葉で問われる」論点として押さえる

次回の第4回は、学科のもう一つの足切りの山、関係法令の数字(安全係数・使用禁止の基準・立入禁止)を、覚え方と誤解しやすい点といっしょに整理します。


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※この記事は2026年9月28日時点の公開情報をもとにしています。講習の内容・合格基準・費用・持ち物は登録教習機関ごとに異なるため、受講前に必ず申込先の機関の案内で確認してください。法令の条文はe-Gov法令検索で確認できます。体験記の引用は各記事の原文から行い、リンク先に出典を明記しています。

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